スポーツでは反則での得点は認められない

帝国データバンクのレポートでは、2024年のコンプライアンス違反の倒産は、過去最多の388件に及ぶとのこと。組織管理、危機管理の視点から見れば、名目上「やってます」ではなく、「実効性が上がっている」ことが目的なのですが、その実効性には疑問を感じています。

【図表2】コンプライアンス違反倒産件数
帝国データバンク「コンプライアンス違反企業の倒産動向調査」(2025年1月24日)のデータをもとにプレジデントオンライン編集部にて作成

危機は必ず起こるものです。「(危機は)あってはならない」という精神論を唱えるような組織は、脆弱な危機対応しかできないと考えています。コンプライアンスは業務推進上の罰則やハンディキャップではなく、正しい成果を上げるためのルールです。

以前より厳しくなったコンプライアンス

スポーツでルールを破れば反則であり、その成果は成果として認められません。サッカーでキーパー以外の選手がボールを手でゴールさせたのと同じ違反なのです。こうしたコンプラ違反による成果も同じです。

レッドカード
写真=iStock.com/kinemero
※写真はイメージです

反則でも点が入ったからOKとはならないように、不正手段によって情報を得て、それが業績に反映できたとしても、結局後になってバレれば、経営陣も責任が問われます。日本生命は2025年9月中間連結決算では、グループ基礎利益が過去最高を達成したということですが、この事件の会見は、当然とはいえ最高益達成の高揚感などみじんもないものでした。

今回の事件は単なる他山の石、自社とは関係ない話ではなく、我が国すべての企業に求められているコンプライアンスの「現在位置」が、かつてとは比較にならないほど厳しいものになったということだと思います。そしてそのための対応として、社内での認識共有や実効性ある研修がなされているのかという警鐘ととらえるべきでしょう。

【関連記事】
だから日本人の「百貨店離れ」が進んでいる…三越伊勢丹HD元社長がルイ・ヴィトンを絶対に入れなかった理由
トヨタでもサントリーでもない…ハーバード大学経営大学院が教材にする従業員850人の日本の同族経営企業
「出光は社員を1人もクビにしない」経営難でも1000人以上を雇い続けた出光佐三の不動の"経営哲学"
「三菱商事"採用大学"ランキング」を見れば一目瞭然…学歴社会・日本で成功に必要な「出身大学の最低ライン」
「性犯罪者は全員死刑でいい」そう言って母は息子の性器に手を伸ばした…表に出ない「息子を襲う母」のリアル