小宮一慶が出題、あなたは何問答えられるか──数字に対するセンスを磨くことはいまやサラリーマンにとって必須の条件だ。それは、経済成長が頭打ちとなったこととも無縁ではない。お金や予算の伸びが限られているなか、買うべきか、買わざるべきか。投資すべきか、やめるべきか。そして日本経済はどこへ向かうのか。7つの問題を考えることによりあなたの数字センスをアップさせよう。
特売のルーを買って得した気分になっていつもより高い牛肉を買ってしまえば、トータルの出費は大きくなるかもしれないが、得をした気分は変わらない場合もある。かように数字の解釈は、それを受け取る人間の心理状態によって大きく変わってしまう。
たとえば、読者が200万円のロレックスの腕時計を勧められたら、どう感じるだろうか。おそらく一般的な水準の給与を貰っているサラリーマンだったら、時計マニアでもない限り「そんなに高い腕時計はとても買えませんよ」と断ることだろう。ところが数字のマジックにかかると、200万円のロレックスが安物に見えてしまう場合がある。
これは拙著『ビジネスマンのための「数字力」養成講座』(ディスカヴァー携書)にも書いたエピソードだが、私が顧客を連れてニューヨークに行ったときのことである。私の知り合いに有名な時計商がいて、彼のところへ私の顧客を連れていったことがあった。顧客はむろん時計マニアなどではない。
さて、顧客の前に現れた時計商が何を持ってきたかというと、それはかのフランク・ミューラーが時計学校を卒業する際に、卒業制作として組み立てたというロレックスであった。時価はなんと、約1億円。
時計商は、あくまでもサービス精神でその腕時計を顧客に見せ、そして腕に巻いてあげたのだが、そうこうするうちに顧客がこう言い始めたのである。
「200万円ぐらいのロレックスなら、買ってもいいか」
一般的に、200万円の腕時計は「超高い」ものだろう。ところが1億円の腕時計を試した後では、「安い」買い物になってしまうのである。
数字は万人に同じ意味内容を伝えているように見えるが、そんなことはない。受け手の心理状態次第で、数字はまったく異なる容貌を見せることになるのである。