これには医学的な根拠がある。アスペルガー症候群などの要因によって、いわゆる「空気を読む」能力が先天的に欠けている人は男性に多いのだ。普通学級にもアスペルガーなどの発達障害の子どもが約7%は存在するという調査結果もある。具体的には、ものごとの文脈を読むのが苦手な人たちだ。
私の著作は受験問題の題材に使われることがある。しかし、筆者であるはずの私が「筆者の意図を答えなさい」という問題に正解できるとは限らない。選択肢に私の「意図」に合った答えが1つもないこともあるからだ。国語の問題は、筆者だけではなく出題者の意図も汲めなければならない。
空気が読めない人は、このような裏の文脈を察することができず、憤慨してしまう。彼らは性格が悪いのではない。能力のバランスが悪いのだ。数学など他の能力には秀でているケースも少なくないため、高学歴を得て大企業で働いている人も意外なほど多い。こういう人がマネジャーになると、部下たちは非常に苦労すること確実である。
やっかいなのは、空気が読めない人はなぜか「自分は拒否されている」という空気には敏感であることだ。急激にやる気を失ったり、キレてしまったりするので注意が必要となる。
対策としては、周囲の受け入れ体制を整えることが不可欠。対象者に細かく具体的な作業マニュアルを作成して渡すと、非常に高いパフォーマンスを挙げたという報告事例もある。
敵はいるけど、戦友はいない
Q2の結果に戻ろう。私が気になるのは、「友情でつながっている」「企業戦士としてつながっている」と回答した人が少ないことだ。男性同士のつながりは強いほうだが、それでも4割に満たず、6~8割の人にとって社内に味方がいない状況である。
この状況は日本企業の活力を殺ぎかねない。現在、企業社会における人権意識は高まり、一方で横並び意識は弱まっていない。結果として、「嫌いな人は多いのにライバルや戦友と呼べる人はいない」という冷え冷えとした職場ができあがっているのだろう。