医療の価値を伝えるにはどうすればいいか。循環器内科医であり病院マーケティングサミットJAPAN代表理事の竹田陽介さんは「急性期の患者を大量に受け入れている関東圏の私立病院では、医師はどんどん治療したいから、看護師は仕事が増えて毎年100人ほど辞めていた。そこで強く打ち出す看護師像を変えると応募が殺到した」という。鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長との対談をお届けする――。

※本稿は、鳥取大学医学部附属病院広報誌『カニジル 20杯目』の一部を再編集したものです。

病院マーケティングサミットJAPAN代表理事の竹田陽介さん(右)と鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長(左)
撮影=七咲友梨
病院マーケティングサミットJAPAN代表理事の竹田陽介さん(中央右)と鳥取大学医学部附属病院の武中篤病院長(中央左)

最後の砦となる「医療人の頑張り」を伝える広報誌

【竹田陽介(病院マーケティングサミットJAPAN代表理事)】まずは『病院広報アワード2025』(CBnews主催)広報担当部門大賞の受賞おめでとうございます。以前からカニジルを愛読していたので、大賞は当然と思いました(笑い)。

【武中篤(鳥取大学医学部附属病院長)】ありがとうございます!

【竹田】カニジルが他の広報誌と違うのは兎にも角にも「人」が伝わってくるところ。広報誌を作るとなると医療の情報を詰め込みたくなる。カニジルにも医療の情報は入っているんですが、とりだい病院の職員たちが、生身の人間として語りかけてくるような印象がある。

医療人としての誠実さ、熱量、人となりが伝わる媒体なのでぼくは昔から大好きなんです。カニジルは武中病院長が広報・企画戦略センター長のときに立ち上げられたんですよね。

【武中】ええ。最初から関わっています。竹田さんが指摘されたようにカニジルは人にフォーカスしています。もう一つの特徴は、病院をPRしようとしていないところではないかと。

【竹田】病院の広報誌なのに、病院をPRしない(笑い)

【武中】PRとは、患者さんをたくさん集め、収益を上げるという目的です。我々はそんなことを考えたことがない。前任者である原田省先生(現・鳥取大学学長)は、とりだい病院を米子出身の経済学者である宇沢弘文さんの提唱した“社会的共通資本”になぞらえた。

医療機関であるだけでなく、市民の基本的権利を維持するために不可欠な役割を果たすもの、という意味です。カニジルもその考えに則っています。一帯の医療の最後の砦を守っている医療人の頑張りを知ってもらいたいんです。