過去には渋滞も…失敗から得た教訓
なお、宮城県では2016年に石巻市で「ポケモンGO」イベントを開催したものの、自家用車で「ラプラス」(希少なポケモン)を獲りに行く人々が地域に渋滞を引き起こすなど、混乱をきたしたこともある。
その教訓を生かしたのか、仙台市ではイベント誘致だけでなく、「歩きスマホへの注意喚起」「交通機関での来場呼びかけ」を積極的に行い、地下鉄増便やフリー乗車券発売などで参加者がスムーズに移動できるような仕掛けを作った。
かつ、メイン会場だけでなく商店街でもイベントを分散し、メイン会場の七北田公園やスタジアム以外にも賑わいが生まれる仕掛けを作った。スクウェア・エニックス側でも、前日まで「イベント用の立像と点字ブロックの距離」を仙台市と細かく協議して修正していくなど、要望にとことん応え、仙台市・商店街などとともに参加者を迎える体制を構築した。
過去の「ドラゴンクエストウォーク」リアルイベントの中でも、ゲーム会社だけでなくここまでの広範囲での連携を取れた仙台市での開催は、今後のイベントの大きな転換点でもあり、成功例となるだろう。全国の自治体・施設管理者などから「次回開催をぜひとも我が町に!」との声が相次いでいるのも、納得できる話だ。
有料化の想定外の効果
ただ、位置情報ゲームのイベントは、マナーに関する問題が付きまとう。
「ドラゴンクエストウォーク」リアルイベントでも、「会場の入場料(大阪・万博記念公園。大人260円)のみ」で参加可能だった第1回(2022年12月)では、極度の混雑による人波の渋滞、鉄道の極度な混雑といった問題を発生させてしまった。柴プロデューサーも当時を振り返って、「無料開催のため来場者数を読み切れず、適切なサービスができなかった」と、今でも気にされている。
2回目(山梨県・富士急ハイランド開催)以降は相応の入場料を徴収することで人流をコントロールし、トラブルへの対策を行ったという。
また、課金して出向いてまで参加される方は概して購買力もあり、会場周辺に想定外の経済効果をもたらしているようだ。
例を挙げると、2025年5月の第4回開催でも、「エスコンフィールドHOKKAIDO」側がそこまで混雑すると思わずに物販関連を仕入れていたものの、実際には、約3万人が訪れる北海道日本ハムファイターズのプロ野球公式戦並みにグルメ・土産物が売れていたという。
「運営の現実」と「誘致したい自治体」
北海道開催に参加した筆者も、ホットドック販売員が「試合がないのにこんなに売れたことないんです、すいません!」と、予想外の長蛇の行列に並ぶ参加者に頭を下げながら対応されていたのを目撃している。
「ドラゴンクエストウォーク」はゲームに「ご当地スライム」「ふるさとスライム」などの収集型コンテンツを取り込んでいることもあって「長距離移動で観光して帰る」タイプのプレイヤーも多く、位置情報ゲームのリアルイベント開催とは相性が良いのだろう。
なお、次回の「ドラゴンクエストウォーク」リアルイベントは、会場未定ながら「2026年4月18日・19日開催」と発表されている。
柴プロデューサーいわく「年2回開催を希望する熱量の高いプレイヤーと、もっと少なくていいプレイヤーがいて、今後の開催の在り方を迷っている部分もある」とのこと。次の開催地がどこか、詳細を待ちたい。


