※本稿は、佐藤優『定年後の日本人は世界一の楽園を生きる』(Hanada新書)の一部を再編集したものです。
仕事を離れて気づく、家庭という難題
作家のチャールズ・ディケンズは、「旅行者は、その放浪によって家庭のありがたさを学ぶ」と言った。であるならば、定年後の自由な時間を使って一人旅をするのもいいかもしれない。
定年後は家庭環境も変わる。子どもは既に独立しており、結婚して孫がいるかもしれない。そして、自宅で夫婦二人きりで過ごす時間が増える。これまで仕事中心の人生を送り、家庭を顧みてこなかった男性の場合、あらためて妻や家庭と向き合う必要があるだろう。
厳しいビジネス社会から退いて精神的に楽になるかと思いきや、実は家族こそがプレッシャーの原因になった、そう感じる人も数多くいる。
こうしたことを避けるためには、できるだけ早くから配偶者や子どもとの関係を深めておくことだ。
実は私自身、結婚を一回失敗している。その当時は、あまりにも仕事中心の生活を送っていた。家庭など、まったく顧みなかったのだ。それゆえ現在は、できる限り家族との時間を大切にしている。
作家は会社に出社する必要のない職業。しかし多くのビジネスパーソンは朝に出勤し、昼はほとんど家にいない。「いまさら家族とどう向き合えばいいのか?」――これが本音のようだ。
家庭にも必要な“ソーシャルディスタンス”
実際、コロナ禍では、夫が在宅勤務になり、妻が精神的にも肉体的にも疲れ切ってしまった例がある。日本の女性は、40代から50代で鬱病になることが多いとも聞く。
一方の夫も、家にこもることに窮屈さを感じる。なぜか60代以上の男性が家庭で孤立するケースが多いようだ。
平日の図書館に行くと、高齢者がたくさんいる。妻に煙たがられ、家に居づらくなった定年後の男性たちかもしれない……というのも彼らは、最近、困った問題を起こしている。そのため警備員が配されるようになったそうだ。
なぜか? 図書館を訪れる60代以上の人たちが、新聞や雑誌の取り合いをするのだという……しかし、こんなことをしていたら、家族関係を改善する場所としても、隠れ家としても、図書館が否定されてしまう。
これを防ぐには、まず家族内にもソーシャルディスタンスを作り、夫婦が互いにストレスを感じないようにすることだ。加えて定年後の人たちは、仕事も限定したものだけを選び、省エネを図って、自分と家族だけは守れるようにすることだ。

