フォアグラのように白くなる脂肪肝
肝臓に脂肪がたまった状態の「脂肪肝」。これまで脂肪肝は、さほど重大な病気とされていませんでした。しかし近年、さまざまな病気のリスクを高めることがわかり、世界的に危機感を持たれ始めています。
世界の調査では、1999~2005年の脂肪肝患者は成人の25.3%だったのに対し、2012~2017年では33.9%となり、増加傾向にあります(Jie Li, FujiiH, Jun DW, et al. Lancet Gastro 2019)。
特に問題視されているのが、お酒を飲まないやせ型の人に脂肪肝が増えているという事実です。「肝臓はお酒の飲み過ぎで悪くなる」「脂肪肝は太った男性がなるもの」というイメージを持っている人も多いでしょう。
脂肪肝には種類があり、飲酒量によってアルコール性か非アルコール性かに分類されます。お酒を飲まない人の脂肪肝を、「MASLD(マッスルド・代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」といい、2023年の調査では、世界で成人の25.8%、つまり約4人に1人がMASLDであると報告されています(Younossi et al. Hepatology 2015)。
脂肪肝は、生活習慣の乱れにより肝臓の細胞に中性脂肪がたまって起こります。脂肪が細胞の核を圧迫し、脂肪滴と呼ばれる透明な水滴がたまったように見えるのが特徴。健康な肝臓の細胞は赤いのに対し、脂肪滴が増えるとまるでフォアグラのように全体的に白っぽくなっていきます。
病理学的には肝臓の5%以上に脂肪の沈着があると脂肪肝と診断されますが、腹部の超音波検査でわかるのは、30%程度になってから。5~30%にあたる「隠れ脂肪肝」の成人も少なくありません。
男性は40~60代の中高年に多く、女性は閉経後に増える傾向にあります。これは、女性ホルモンのエストロゲンが、コレステロールや中性脂肪をたまりにくくする働きがあるから。ホルモンの恩恵がなくなると、肝臓に脂肪がつきやすくなるため、閉経後は特に注意が必要です。


