人の能力にさほど違いはなく、能力を出し切れるかどうかで大きな違いが生まれることはすでに触れたが、パフォーマンスに大きな影響を及ぼす要素の1つがマインドである。
先日のなでしこジャパンの優勝を見てもわかるように、技術や体格が明らかに勝る相手を負かしてしまうのは、やはり「気持ちが乗っていた」からだろう。体を動かすだけのスポーツでさえそうなのだから、頭を使う仕事ではその何十倍もマインドが影響してしかるべきだ。
アンケートを見てみると、「悪い出来事が起こったときには、早く忘れて、気分を切り替える」と答えた人の割合は、1500万円以上のほうが高かった。稼げる人は、うまく気持ちの切り替えができているということだろう。
気持ちの切り替えとは、何事も前向きに捉えることといってもいい。「悪い出来事は必然と捉え、それが自分に教えようとしている意味を探す」という設問でも、1500万円以上に「あてはまる」と答えた人が多かった。
失敗したときやうまくいかないときこそ、「そこに成功するためのヒントがある」と思えるかどうか。稼げる人になるには、悪い出来事も自分の糧にしていくポジティブさが必要だ。
それでも悲観的になりがちなときは、こう考えてみてはどうだろう。そもそも世の中においしい話はない。金融的な考え方をすれば、コストとベネフィット、リスクとリターンは一致する。つまりこの世の中には、ラクでつまらないことか、大変ですごくいいことのどちらかしかないのである。
物事がうまく進んでいるときは、いつか転げ落ちることだってある。逆に大変なときは、この苦労がいつか自分の力になって返ってくると思えばいい。以前、上司に教えられた言葉に「失意泰然、得意淡然」という言葉がある。
私自身、失意のときこそ慌てずどっしりと構え、うまくいっているときは調子に乗らず、謙虚に努力したいと思う。
1976年、埼玉県生まれ。98年東京大学法学部卒。大学在学中に司法試験に合格。米ハーバード経営大学院に留学後、ライフネット生命の設立に参画。著書に『入社1年目の教科書』など。