ビジネスをめぐる状況が刻々と変わるいま、我々には、どのような課題や能力が求められているのか。今回、アンケートの調査結果をもとに、ライフネット生命副社長・岩瀬大輔氏がアンケート結果を分析。8つの力に収斂させた。データと実践のためのヒントをお届けしよう。
稼げる人も稼げない人も、接することができる情報量や課せられる仕事、身の回りの出来事にそれほど大差はない。両者を隔てるのは、そこから何をどう学ぶかという学びの姿勢だ。
アンケート結果を見ると、「いっけんつまらない仕事でも、自分なりの付加価値をつけることを意識している」と回答した人は、年収1500円以上では20%を占め、年収500万円台の2倍以上になっている。この結果からも、稼げる人ほどつまらない仕事をいかにおもしろくするかを意識しながら仕事していることがわかる。
仕事というのは往々にしてつまらないものであって、それをどうおもしろくするかは本人次第である。「来客へのお茶出しをチャンスと捉える」人も、1500万円以上にその傾向が見られる。お茶出しもそうだが、カバン持ちも自分の目線を高めるには絶好のチャンス。社長や役員が出席する商談や交渉の場であればなおさらだ。
また、「どんな些細な仕事でも必ず気づきや学びがあると思う」という設問でも、1500万円以上で「あてはまる」人が多かった。ここから推測されるのは、稼げる人は他人と同じ情報に接しながらも目線が違うということだ。
稼げる人は情報をたくさん持っているのではないかと思いがちだが、情報量は誰もそれほど大差はない。同じ情報からいかに気づきを得て、物語を組み立てていけるかが、稼げる人と稼げない人の差になって表れる。
以前、当社の社長である出口治明から聞いた話だが、立花隆氏が『田中角栄研究』で金権体質を暴いたとき、新しい情報は何1つ持っていなかったという。当時公表されていた情報を集めて、組み立て、新しい解釈を加えて1つの物語として発表したというのだ。
これはあらゆる場面で当てはまると思う。私の周りの稼ぐ人たちを見ても、超高度な秘密情報を持っている人などまずいない。誰もが平等に持っている情報や事柄からでも、新しい気づきを得られることを知っているだけだ。
1976年、埼玉県生まれ。98年東京大学法学部卒。大学在学中に司法試験に合格。米ハーバード経営大学院に留学後、ライフネット生命の設立に参画。著書に『入社1年目の教科書』など。