家族のいない“おひとり様”は、どのようなリスクを抱えているのか。むさしの救急病院理事長で救急科専門医の鹿野晃さんは「医療の現場では、身寄りのない患者は『扱いやすい患者』と見なされることがある。家族がいる人と、いない人では、命の扱われ方に違いが出てくる」という――。(第4回)

※本稿は、鹿野晃『救急医からの警告』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

病室に一人で座っている高齢女性
写真=iStock.com/SDI Productions
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「おひとり様」が抱える思わぬリスク

あなたは「おひとり様」の生活に憧れを抱いたことはありませんか?

自由気ままで、誰にも縛られない生活は、多くの人にとって魅力的に映るかもしれません。しかし、その選択が自分の命の価値を左右する可能性があることを、どれだけの人が知っているでしょう。

医師として日々の診療に携わる中で、私は「おひとり様」が直面する厳しい現実を目の当たりにしてきました。それは、一般的には見過ごされがちな課題かもしれません。医療や介護の現場で働く者として、率直にお伝えする必要があると感じています。

「おひとり様」の思わぬリスクと向き合うべき現実、そして社会全体で考えるべき問題について、ここで深く掘り下げてみたいと思います。

今、結婚しないことを選択する人が増えています。個人の自由を尊重する風潮は、とくに若い世代にとって魅力的に映ります。若いうちは、病気のことをあまり意識しないのと同じように、結婚や家族についても深く考えることが少ないものです。

費用対効果を重視する「コスパ」や時間の使い方の効率を重視する「タイパ」という言葉が流行っているように、自由や時間、お金の使い方を優先しがちです。とはいえ、いざ自分の体が弱り、高齢になったとき、この選択を後悔することはないのでしょうか。「おひとり様」が将来の人生にどのような影響を与えるのか、とくに人生の最期を迎えるときに何が起こり得るのか、慎重に考えてみる必要があります。

「おひとり様」の最期とは、どのようなものなのでしょうか。