2025年7月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。カルチャー部門の第3位は――。
▼第1位 「アンパンマン」やなせたかしの字が今も三越の包装紙に…プロになりたくても決断できなかった兼業漫画家時代
▼第2位 だから吉沢亮主演「国宝」は興収約60億の大ヒットに…映画版ではばっさりカットされた「原作の超重要シーン」
▼第3位 他の絵師の春画とはまったく違う…「べらぼう」で染谷将太演じる歌麿だけが執拗に描いた"女性の身体のパーツ"
江戸時代における春画の意外な使い方
江戸時代の浮世絵といえば、美人画や役者絵、風景画を思い浮かべる人が多いだろう。それらは、世界にも誇れる芸術作品として位置づけられている。
ところが、同じ浮世絵であっても、春画はポルノ扱いされ、残念ながら日本では長らく“無修整”の春画を見ることができなかった。局部が黒塗りにされていたからである。
しかし、春画にたいして、ワイセツだ、ポルノだと反応したのは現代人であり、江戸時代には、老若男女を問わず、多くの人々から親しまれる存在だった。春画は「笑い絵」とも呼ばれ、絵草紙屋(本屋)の店頭に公然と並べられ、商われていたのである。
また、『見返り美人』を描いた菱川師宣や、『富嶽三十六景』の葛飾北斎をはじめ、喜多川歌麿、歌川国芳など、江戸を代表する絵師たちはこぞって春画を描き、完成品にはちゃんと絵師の名前が記されていた。有名絵師たちが春画の創作に並々ならぬ力を注いでいたことがうかがえる。
春画の購入者には、自慰の道具にする者もいたが、春画は男性専用ではなく、女性も購入していた。それが、現代のポルノ雑誌やエロ漫画とは異なる点で、“性教育”のため、嫁入りの決まった娘に、親が春画を買い与えることもあった。
意外な目的で購入する人もいた。春画は「火避図」ともいわれ、持っていると火事にあわないといわれていた。つまり、マジナイ道具としても利用されていたのである。

