【俣野】先ほどの、部下の能力の伸ばし方にも通じるものがありそうです。どんな相手でも、必ずいいところがあると思って接することが大事ですね。

【弘兼】あまりにも迷惑ばかりかける鼻つまみ者がいるなら、はっきりと「そういうことはよせ」と言ってやったほうがいいと思うけれど、やっぱり組織にはいろんな人がいたほうがいい。

『ナバロンの要塞』という古い映画があって、これはみんなの足を引っ張っるやつがチームに1人だけいるんだけど、そいつをかばいながらみんなが協力することによって目的が達成できるという話です。こういうことは現実にもよくあるでしょう。全員が精鋭だと、かえってうまくいかない。

【俣野】全員が4番バッターのチームが勝てるわけではないようなものですね。

【弘兼】1人か2人、オッドマン(奇妙な人)がいることで、その人が緩衝材のような役割を果たしてくれて、うまくいく。これは「オッドマンセオリー」という有名な理論です。

たぶん組織って幕の内弁当みたいなものだと思うんですよ。いくら肉が好きでも、折り詰めに肉だけギッシリ詰まっているなんて、ちょっと鬱陶しいでしょう。幕の内弁当は肉だけでなく、卵焼きも、野菜の煮物も、佃煮も漬け物もあるからおいしい。それと同じように、組織には人それぞれの役割があって、優れた人とそうでもない人が1つの箱にまとまって入ってる。だからうまくいくんですよ。

※この記事は書籍『プロフェッショナルサラリーマン 実践Q&A編』からの抜粋です。

俣野成敏(またの・なるとし)●1971年、福岡県北九州市生まれ。1993年、東証一部上場のシチズン時計(株)入社。安息の日もつかの間、30歳の時に半世紀ぶりの赤字転落による早期退職募集の対象になる。ダメ社員には転職や起業の選択肢もないことを痛感するとともに、退職を余儀なくされた年配者が自分の将来と重なり一念発起。2002年、経験や人脈の一切を欠く状態からアウトレット流通を社内起業。老舗企業の保守的な逆風の中、世界ブランドが集う施設で坪売上上位の実績を積み、30代で年商14億円企業に育てあげる。2004年に33歳でグループ130社の現役最年少の役員に抜擢。2011年にはメーカー本体に帰還、40歳で史上最年少の上級顧問に就任。同年出版した著書『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)は、翌年10月に出版された図解版と合わせてシリーズ累計11万部のベストセラーとなる。amazon.co.jpの2012年間ランキング(ビジネス・自己啓発)で33位に入賞。2012年6月、独立。複数の事業経営の傍ら、大学生や社会人を応援する活動をライフワークにしている。 http://www.matano.asia/
(構成=長山清子 写真=上飯坂真)
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