ただ、“ヤセ”にはもっと現実的な理由もあって、太ると思いっきり服がなくなる。ちゃんとしたブランドならともかく、中堅・中小ブランドはワンサイズしかありません。しかもそのワンサイズは、標準よりやや細めが一番似合うようにできています。だから、体形が少しでもそこを上回った瞬間、カッコ悪いか高いか、どちらかの服しか手に入らなくなるんです。

簡単な自己実現であるという側面も、“ヤセ”を後押ししています。ある程度努力すれば、一時的に何とかなっちゃう。そうして痩せると、脳内にエンドルフィンという快感ホルモンが出て、ちょうど拒食症のように食欲が抑制されます。

すると、ストレスが溜まってスイーツを食べる。これは男性にとってのお酒のようなもの。しかも平日の昼間に摂っても怒られません。しかし、スイーツをたくさん食べたら、太りたくないからごはんを減らす。すると、体重は変わらなくても体脂肪率は上がります。だからますますごはんを減らし……という悪循環に陥りがちです。

そこで、女性は痩せる情報を交換しあったり、お互いを牽制しあうために太った人は太った人どうし、痩せてる人は痩せてる人どうしでコミュニティを組みます。痩せている人のコミュニティでは、太っている人の存在は許されません。弾かれはしませんが、普段気をつけることも違うし、ファッションの話も躊躇しちゃうから、自然と仲間とは思われなくなります。

女性が子孫の生存率を高めるには、そうしたコミュニティからは外されないほうがいい。“ヤセ”は「空気のような差別」を逃れ、コミュニティへの“参加権”を得るためのパスでもあるんです。

ロールモデルへの同一化、自己実現、コミュニティへの参加権。女性を理解する一助としてこの3点を押さえておいてください。

経済評論家 勝間和代
1968年、東京都生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科、慶應義塾大学商学部卒業。外資系会計事務所、コンサルタント会社を経て独立。近著に『まじめの罠』『やせる!』ほか。
(構成=西川修一 撮影=永井 浩)
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