1勝3敗1引き分け。今年4月の「第2回電王戦」でプロ棋士はソフトに負け越した。コンピュータのデータ解析能力は、将棋のような複雑な世界でも人間を上回りつつある。こうした「ビッグデータ」はビジネスではどう活かされているのか。各社の最新事例を探った──。

一方、ローソンでも「POSデータ」をさらに深めたデータ分析が進んでいる。最大の要因は10年3月に導入した共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)」だ。ポンタの会員数は昨年末に5000万人を突破。提携企業数は13年5月現在で66社にのぼる。

Pontaカードの券面。ゲオ、昭和シェル石油、KFCなどで利用できる。

ポンタの導入により、「1割のヘビーユーザーが6割の売り上げを占めている」といったことがわかるようになった。そうした中で、最も重視されている指標の1つがリピート率だ。ローソンではFC店向けに発注の目安となる「商品力指数」を示しているが、これもリピート率を基準にしている。

たとえば「ほろにがショコラブラン」という菓子パンがある。この商品は菓子パンの売り上げ順位では31位(取材時点)で、決して「売れ筋」ではない。何も知らなければ発注は止まってしまう。しかしデータを分析すると一部の女性から頻繁にリピートされていることがわかる。このパンはローソンにしかない商品だ。品切れとなれば、大事な顧客を逃すことになる。順位だけでは、本当の支持率はわからない。

ローソンの「ほろにがショコラブラン」。糖質やカロリーを抑えた甘さ控えめの菓子パン。

こうした判断は早ければ約1日で示される。全店の売り上げ記録を精査すると、わずか1日のデータだけでも、その後の商品動向がわかるという。ローソンでは06年から「PRiSM」と呼ぶ業務改革プロジェクトを進めている。目的のひとつは情報分析力の強化。それまでは処理能力の限界から、全店の売り上げデータをすぐに分析することができず、データを一部の店舗に絞り込んでいた。マーケティングステーションディレクター補佐の倉持章さんはいう。

「コンピュータ技術の進化は一番大きい。いまは全店のデータを1日で分析できます。一部のデータだけ見るのと、すべてのデータに触れることは違う」

【ローソン】売り伸ばせるかを1日で判別
・「Ponta」は66社5200万会員(2013年4月末)
・ローソン利用者の約45%がPontaを利用している
・1日約2000万件のデータから、売り伸ばしの可能性を最短1日で判別
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