グローバリゼーションにより、40歳を過ぎて突然中国語や英語が必要になる人も増えている。若いときに留学や海外経験のないミドルが、どのようにして仕事に使えるレベルに上げたのか?
4時起床で出社前に単語と例文を暗記
キヤノンの中国法人であるキヤノン(中国)副総裁兼イメージコミュニケーションプロダクツグループ担当の渡邉昇さんは、80年にキヤノン販売(現・キヤノンマーケティングジャパン)に入社して以来、カメラのセールスマンとして全国を駆け回っていた。
95年、異動先の神戸が大震災に見舞われ、カメラ販売店への挨拶回りは水や食料の供給で始まった。そのときの活躍が評価され、突然、中国行きの話が舞い込む。当時は中国での販売活動は許されていなかったが、将来的に市場拡大が見込まれ、営業のわかる人間が必要との判断だった。98年、43歳を目前にして中国行きが決まった。
しかしながら、中国拠点にいた10人弱の社員はみな大学で中国に関する知識や中国語を専門に学んだエキスパートばかり。
「英語もまるでダメなのですが、海外で働いてみたいという気持ちはありました。でも中国は想定外。正直言って、中国語にも、中国そのものにも興味はありませんでした」
出発までの期間、キヤノン本社に移籍したうえで、会社から命じられて語学学校で40時間の中国語講習を受けて準備した。わずかな準備だけで中国に向かったが、通訳もいるということでそれほど危機感はなかった。
が、転機は突然やってきた。中国赴任から半年して、上司から「中国語はどうかね」と尋ねられたのだ。ふだん通訳を使っていた渡邉さんは「いやあ全然やっていませんよ」と答えたが、「中国語も身につけられないなら日本に帰ってもらう」と上司に釘を刺されてしまった。
渡邉さんはこの言葉に奮起した。すでに妻子も中国に呼んでいたし、赴任した頃から中国は活気があり、「中国人とは気が合うなと感じ始めていた。それに社内の現地スタッフや営業先の販売店さんと中国語で心を通わせるような会話もしたかった」。