安倍首相の要請により始まった「一斉休校」は正しい判断だったのか。医師の和田秀樹氏は「安倍政権は、心理学でいう視野狭窄の状態に陥っている。目前の『感染拡大』にばかりとらわれてしまって、ほかの重要なことが冷静に考えられなくなっている」という――。
参院本会議に出席した安倍晋三首相=2020年3月6日撮影
写真=AFP/時事通信フォト
参院本会議に出席した安倍晋三首相=2020年3月6日撮影

「一斉休校」で学力低下という大きな代償を払うことになる

新型コロナウイルスで世界中がパニックのようになっている。

2月27日に、安倍晋三首相が3月2日から全国すべての小学校・中学校、それに高校と特別支援学校について、春休みに入るまで臨時休校とするよう要請する考えを示した。

そのため、何の準備もしていない学校現場は大慌てとなり、卒業式ができない子どもや小さな子供をもつ親御さんの困惑ぶりが伝えられると、翌28日には一転して、安倍首相は、衆議院財務金融委員会で「今回の要請は法的拘束力を有するものではなく、最終的な判断は学校を設置する地方自治体や学校法人などで行われるものだ。各学校や地域で柔軟に判断いただきたいと考えている」と述べ、萩生田光一文科相も同様のコメントを出した。

しかし、すでに休校で動き出した流れは止められず、結局、ほとんどの学校が春休み終了まで休校となった。

私の知り合いの私立進学校の校長は、少しでも子どもの学力低下を食い止めようと地域で唯一、授業を続けたが、周囲から有形無形の圧力を感じて、数日後にはやはり休校することに決めたという。

学校に限らず、コロナウイルス騒動の余波は多くの場に広がり、とくにスポーツ界では無観客試合が当たり前のようになっている。

あくまで個人的見解だが、私は対応がバタバタしすぎていると感じる。本連載ではこれまで本来賢い人たちがあるきっかけで思考停止のようなバカな状態になっている現象を報告しているが、今回もそれに該当するのではないか。