安倍政権「稚拙な新型コロナ対策」の3つの盲点

心理学の立場から、3つの観点から新型コロナ騒動に対する疑問を述べたい。

(1)まず、一斉休校のような大きな代償を払ってまで感染の拡大を防ぐ必要があるのかということに対する多角的検討が足りないのではないかという疑問だ。

(2)次に、それだけのことをやって本当に終息に向かわせられるのかという疑問だ。

(3)最後は、厚生労働省は感染の拡大防止や予防的なことにばかりに重点を置きすぎていて、「感染後の対応」が二の次にされていないかという疑問である。

2月29日、内閣広報室は安倍内閣総理大臣記者会見をライブ配信
写真=首相官邸YouTubeより
2月29日、内閣広報室は安倍内閣総理大臣記者会見をライブ配信

まず(1)「大きな代償を払ってまで感染の拡大を防ぐ必要性を多角的に検討していないのではないか」について。かつて世界で流行した致死率35%のMERSや10%のSARSなら、一時的に経済活動をストップしても感染拡大阻止に全力を挙げるべきだろう。

ただし、その場合は、学校の休校やスポーツ観戦の禁止というような手ぬるい処置ではなく、電車やバスの運休、企業の就業停止など、不特定多数の人との接触停止を2、3週間程度やるくらいの徹底が求められる。

一方、今回の場合、新型コロナウイルスの感染者数は3月4日時点で、中国で感染者が8万人を超え、2943人が死亡したとされている。致死率は3%を超えているから、かなり高いと言えるが、中国の人口を考えると爆発的な感染とまでは言えない。世界全体でみると、9万2722人が感染し、3155人が死亡しており、死亡率は似たようなものだ。

日本でもすでに268人中12人が亡くなっている。致死率は世界と同レベルだが、ほとんどが高齢者なのも確かである。

アメリカのインフルエンザが日本に入るのを防ごうという話は聞かない

実は、アメリカではインフルエンザで今シーズンだけで1万2000人が亡くなっている。アメリカの場合、医者にかからないで死ぬ(医療費が高いため)人が多いので、3万人という推定もある。それでも、アメリカのインフルエンザが日本に入ってくるのを防ごうという話は聞かない。アメリカの場合、今年のインフルエンザが特別怖いということではなく、2017~18年のシーズンには6万人以上の死者を出している。ただ、その年でも、やはり「アメリカからの感染を防ごう」という動きを国も国民も取らなかった。

以上を踏まえ、スポーツ観戦はともかくとして、学校の休校のデメリットはかなり大きいと考える。なぜなら、インターネットなどを通じた在宅学習のインフラが十分でない日本では、ここ数年学力低下が懸念されている現状をより深刻なものにしてしまいかねないからだ。

また、この休校状態が長期間続き、成長期の子供たちが長い間家を出ないというような事態に発展すると、運動不足により骨や筋肉の発達に影響を与えかねない。

こういう費用対効果を考えないで、手っ取り早くできそうなことだけ、感染拡大防止のための対応をすることに疑問を感じるのだ。