部下から退職の意思を聞いたとき、どう受け止めるだろうか。リンクアンドモチベーションの小笹芳央会長は「『従業員は家族』だと思っていた頃は、人が辞めるたびにつらかった。その考え方を捨て去ってから、冷静にとらえられるようになった」と語る――。

※本稿は、小笹芳央『モチベーション・ドリブン』(KADOKAWA)を再編集したものです。

企業にとって新陳代謝は必然

※写真はイメージです(写真=iStock.com/imtmphoto)

今から当たり前のことを述べる。

国全体として、人材が流動化することは、リソース配分として当然のことだ。これは企業にも当てはまる。企業を一つの生命体と考えれば、一定レベルの新陳代謝は必要である。人材を次々に採用しては次々と辞められてしまう企業、過剰な新陳代謝が起きている企業は、人材のコストアップにもなり問題だが、適度な新陳代謝は企業にとって必然だ。

なぜなら、企業には常に変化が求められるから。ビジネスモデルを変えることもあれば、競争ルールが変わることもある。新しいビジネスに挑戦することも多くなった。そのためには、新しい人も必要だ。

企業の変化に対して、そこで働く個人が「企業に合わせて自分をチューニングしよう」という意識を持ち続ければ、その個人はその企業に残ることになる。しかし、「ちょっと違うな」と思えば、辞める。

「違う」から辞める個人がいるのは自然なことであり、企業にとっても、個人にとっても互いに幸せなことだ。だから、適度な新陳代謝は企業にとって必然なのだ。過度な人材流出はすぐに対策するべきだが、ある程度の新陳代謝を過剰に恐れることはない。

退職の報告を受けるたび精神が傷ついた

さて、なぜわざわざこんなことを書いたか。

企業にとって新陳代謝は必然なのだが、辞められる側としては正直なところ心穏やかではない。それが私にもわかるからだ。

以前よりはるかに簡単に個人が会社を辞めるようになった今、人材流出に心を痛め、頭を悩ますマネージャー、経営者は増え続けている。

私も、リクルート時代を含めて、これまでに従業員が辞めていく姿をたくさん見てきた。退職の面談や報告、挨拶など、そのたびに精神が傷ついた。そこで、あるときから次のように考え方を改めた。

それまでは、「従業員は家族であり、同志である」と言っていた。心からそう思っていた。だがこれを改め、「従業員は投資家だ」という考え方、言い方に変えた。