OSとしての「One for All, All for One」
優秀な個人に辞められるのは、企業にとって大きな損失だ。しかし、「去る者は追わず」が基本的な企業の姿勢ではないだろうか。
特に、企業の理念やビジョン、方向性と、自分の理想や欲求、方向性が違ってきたのであれば、退職が企業と個人の両者にとっての幸せとなる。
企業には変化が求められる。人も自然、入れ替わる。一方で、目指す姿や文化、DNAなど、変えてはならないものもある。当社でいえば、たとえば、「One for All, All for One」の考え方だ。私たちはこの考え方、フレームワークを非常に大事にしている。新入社員には、最初の3カ月間の研修期間にこの考え方をOSとしてインストールしている。
OSはコンピューターを動かすオペレーティング・システムのことだが、同様に、自分が動く際の基盤となる考え方として「One for All, All for One」を従業員全員に理解してもらっているのだ。
2つのベクトルで考える習慣が身につく
だから、何か新しい施策を検討する際にも、「ちょっとfor Allに寄りすぎているから個人が息苦しくなっているな。もう少しfor One寄りに緩和したルールにしよう」といった会話がなされる。逆に、「最近、エンジニア部隊はONEを自由にさせすぎてないか。朝からきちんとやらせたら?」といった意見が出ることもある。
あなたの会社はどうだろうか。今、働き方改革の施策を考え、実行しているのなら、この視点を持ってもらえたらいいと思う。
「One for All, All for One」がOSとして共有されていると、for All寄りの手を打つべきなのか、for One寄りのメニューを増やすべきなのか、この2つのベクトルで考える習慣が身につく。
そして、for Allに寄せたり、for Oneに寄せたりを繰り返しながら、より高いレベルで「One for All, All for One」を実現するためにステップアップを図っていくことができるのである。
株式会社リンクアンドモチベーション会長
1961年、大阪府出身。1986年、早稲田大学政治経済学部卒業、株式会社リクルート入社。2000年、株式会社リンクアンドモチベーションを設立し、同社代表取締役社長に就任。2013年、同社代表取締役会長に就任し、グループ14社を牽引する。『会社の品格』(幻冬舎新書)、『モチベーション・マネジメント』(PHP文庫)など著書多数。