つらいことに直面したとき、どうやってメンタルを保つか。俳優ロバート・デ・ニーロは、オーディションで落ちても「自分の実力の問題ではないことが大半だ」と考えているという。「下積み」が続いても、自己肯定感を保てるメンタル術とは――。

本稿は、教養総研『すぐに真似できる 天才たちの習慣100』(KADOKAWA)を再編集したものです。

「拒絶の理由は自分の実力ではない」

2015年5月、ハリウッドの名優や著名人を数多く輩出しているニューヨーク大学芸術学部の卒業式で、ある俳優がスピーチを行いました。ロバート・デ・ニーロです。

『レイジング・ブル』でアカデミー賞主演男優賞を獲得し、『ゴッドファーザーPARTⅡ』のヴィトー・コルレオーネ、『タクシードライバー』のトラヴィス・ビックル、『アンタッチャブル』のアル・カポネなど、大役から脇役までを幅広く演じ、超大作からB級娯楽映画まであらゆる作品に出演して存在感を発揮した名優です。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/kohei_hara)

デ・ニーロは、盟友でもある映画監督マーティン・スコセッシのほか、オリバー・ストーンやレディー・ガガなども輩出した同学部の卒業式に招かれてスピーチした際、次のような発言をしています。

「拒絶されるとつらいでしょう。でも私の実感では、拒絶というものは自分の実力の問題ではないことが大半なのです」

彼は卒業生に向かい、「あなた方がオーディションを受けたり、役の売り込みをしたりしているとき、プロデューサーや監督といった相手側は、誰か別の人を思い描いているかもしれません」とも語っていました。

つまり、オーディションを受ける側である「あなた」と、プロデューサーや監督側が「思い描いている人」がそもそもミスマッチである場合は多い、だから、相手からの「拒絶」ないし「否定」を「自分のせい」と思い込むのは誤りだと、彼は述べていたわけです。

「次!」で前に進む精神の持ち方

たしかに映画というものは、大物俳優・女優ならいざ知らず、オーディションをはじめから受けるような名もなき俳優・女優に合わせて脚本が作られるわけなどありえません。プロデューサーや監督は、脚本や映画のテイストになるべくフィットし、しかも魅力的な俳優・女優と出会うためにオーディションを行っているのです。

したがって、オーディションを受ける側の人たちが、審査で失敗したからといって落ち込むのは「そもそも間違っている」と、デ・ニーロは言いたかったのでしょう。彼はこの言葉に続いて、卒業生たちにこう語りかけました。

「あの役を得られなかった? ここで出番です。『次!』あなたは次の役か、その次の役を得ることができるでしょう」

デ・ニーロは「Next!」という言葉を使い、卒業生たちを励ましたのです。