超難関といわれる名門中学は、いまだに合格発表をウェブではなく掲示板で行っている。今回、女子学院、桜蔭、開成、麻布、筑駒の都内5校の合格発表を取材した受験ジャーナリストの末木佐知氏は「掲示板の前では歓喜と落胆が交錯していた。その様子を大手の塾関係者が熱心に撮影しているのが目立った。こうした商用利用は残念だ」という――。

合格発表ツアー「女子学院→桜蔭→開成→麻布→筑駒」

2019年の中学校受験が終わった。近年は、景気回復の傾向を受けてか、受験人口が増え競争率も高くなっている。受かるか、落ちるか。その結果は、子供の人生を大きく左右するだけでなく、親の人生にも影響を与える。筆者はそんな受験親子の人生のワンシーンをウオッチするべく、都内超難関校5校の合格発表の現場に出向くことにした。時系列で報告していこう。

▼2月2日土曜11:00@女子学院

東京と神奈川の場合、中学受験は例年2月1日から始まる。特徴は、高校・大学受験と異なり合格発表がとても早いことだ。通常、受験日から1~2日後、学校によっては当日発表というケースもある。筆者が2月2日に訪れたのは、前日に受験のあった「女子御三家」のひとつ、女子学院(千代田区)だ。

10:40、学校近くに到着。学校へ通じる路上では、チラシを配る塾関係者が列をなしている。母親に見えるのだろう。筆者にも差し出された。一枚受け取ったら最後、あっという間にチラシの山となる。合格発表の11:00を前に、校舎の入り口前には行列ができている。2月2日は午前に他校の試験もあるからか、子供の姿は少ない。

11:00になった。列が少しずつ動きだす。「60人ずつご案内しています」という学校関係者の声。まるで大入りの美術展の鑑賞のように人々の群れはおごそかにすすみ、合格番号が貼られた掲示板が近づく。歓喜の声が少しずつあがる。後続の列の親は平静を装っているが、「お願い、わが子の番号もあって」と心が波立ち、鼓動が早くなっているに違いない。受験番号が何とか見える距離になると、親はわが子の受験番号がないか前のめりになって探す。その必死さには、無言の迫力がある。

確認後は、合格者は手続き書類を受け取りに学校の事務局へ立ち寄る。事務局へとつづく道は、いわば「合格者ロード」。一方、不合格者はそそくさと立ち去るのみ。たかが書類、されど書類。持つ者と持たざる者の「格差」はそのまま人生の格差となる……というのは言い過ぎだろうか。

筆者はそうした一部始終を見守って、思った。「あれ、合格発表ってこんなにもあっけなかった?」。わざわざ学校まで来て、数分で終了。不合格者には徒労以外の何ものでもない。11:16に校門の外へ出た。筆者自身、緊張から解放された感じでどっと疲れが出たが、次の目的地である桜蔭学園(文京区)へ移動する。