考慮すべきは「リーダーの実力」と「病院の資金力」
前回(http://president.jp/articles/-/21994)、首都圏の医療が崩壊の瀬戸際にあることを解説した。医療提供体制は急には変わらないし、我が国の財政状況を鑑みれば、公的医療費の伸びは抑制される。政府に提言しても、すぐに問題が解決するとは思えない。患者はどうすればいいのだろう。
まずは、しっかりした病院を選ぶことだ。その際に考慮すべきは、「リーダーの実力」と「病院の資金力」だ。
命にかかわる病気で優秀な医師を探す場合、その医師の上司に当たる院長や教授の人柄や普段からの活動ぶりを調べるようにお奨めしたい。そして、「副業三昧の教授や院長が仕切るところは避けるように」と助言したい。
この場合、副業に含まれるのは、他の医療機関での診療や製薬企業の講演会だけではない。学会活動や審議会など政府の委員会の仕事も含む。「学会や審議会に参加している先生も避けたほうがいい」と言われると怪訝な顔をされる方もいる。ただ、このような仕事は、基本的に名誉職だ。現業である院長や教授職をほったらかしにして、トップが名誉職にうつつを抜かしている組織は避けたほうがいい。
「病院の資金力」は「リーダーの実力」以上に重要だ。世間では「利益を上げている病院は患者の治療よりも金儲けに熱心で患者本位でない」と言われることがあるが、これは病院経営に関する限りは、全くの見当違いだ。
開業医のように医師が一人で経営できる施設は兎も角、ある程度の規模の病院になると、不正をして金儲けをしても、たかがしれている。医師、看護師、薬剤師などの専門スタッフだけでなく、大勢の事務職員も勤務しているため、必ず不正が露見し、内部告発される。
スタッフの技量向上や医療機器に投資しないと、治療成績は向上しないし、最悪の場合、医療事故を起こす。こうなると病院の評判はがた落ちで、民事訴訟や刑事事件に発展する可能性すらある。高収益を誇る病院には、多くの患者が受診し、きちんと治療していると考えたほうがいい。