現場は、思考力を鍛える最適な場所

三菱重工業代表取締役会長 
大宮英明氏

私は理系出身に似合わず、ものごとを論理的、合理的に深く突き詰めていくのはあまり得意ではありません。文章を書くときも、個条書きで項目を並べるのではなく、頭に浮かんだことの関係を表すフローチャートのような「絵」を描くことから始めます。完全にアナログの世界ですが、ものごとを単純化し、本質をつかむにはアナログのほうが適しているように感じます。

絵を描くときは、タテ軸とヨコ軸の両方向から考えます。特に重視するのは、ヨコ展開の何と何が結びつくかというつながりです。独自の新しいものを生み出すとき、自分たちの内や外にあるさまざまな知恵を活用し、いかに組み合わせ、結びつけるか、そこに価値が生まれると思うからです。

ヨコ展開で私がよく使うのがアナロジー(類推)の発想です。アナロジーとは、あることがらの意味合いを他のことがらへ、類似性に基づいて適用する方法などと説明されますが、要は「これは何かに似ていないか」「何かと共通性はないか」と考えることです。

私のアナロジー的な発想は経歴とも関係があります。最初は一品生産に近い航空宇宙事業本部。その後、エアコンなどを扱う冷熱事業本部に移ったことで、大量生産で培った知恵を一品生産に取り入れられないかと考えた。それはアナロジーの発想でした。副社長時代の2007年から「ものづくり革新」を始め、今ではガスタービンの製造もモジュラー化が進んでいます。

このアナロジー的な発想力を高めるにはどうすればいいのか。私の場合、現場現物主義が1つのベースになっています。現場で現物を見ると、ものごとのある一面が典型的に表れます。例えば、航空宇宙事業本部から次の産業機器事業部へ移ったとき、“衝撃的な事件”がありました。同じ会社、同じ給与体系なのに、給料袋が違い、費目も違ったのです。愕然としました。