地方に金をばらまき、票を買ってきた

自民党政権の特質の2番目は「票を金で買う」ことだ。巨大な予算をつくり、赤字国債を発行して、地方に金をばらまく。自民党の政治家の多くは利益誘導で地元に交付金を持ってくる運び屋、アメリカで言う「ロビイスト」である。

民主党政権で財政赤字は加速したが、1000兆円の国家債務のうち980兆円ぐらいまでは、自民党政権時代に積み上がったものだ。つまり財政赤字の大半は自民党政権時代の問題で、返済できないほどの借金をして、地方に金をばらまいて票を買ってきたのが自民党である。

政治家が運び屋になって地方を交付金漬けにして、地方は地方で中央に無心する陳情体質が染みつき、日本では本当の地方自治が育ってこなかった。

本来、地方自治というのは、「徴税権や司法権、行政権などの政治機能は地方がもともと持っていて、国家は共同経営体である」という連邦制的な発想に基づくものだ。しかし日本は世界に類を見ないほどの強力な中央集権国家であり、自民党政治に「地方自治」という言葉はない。あるのはせいぜい「地方分権」、中央が持っている権限を少々分け与えるという発想だ。民主党が大敗した理由の1つは、この“運び屋”さえもうまく演じられなかったことだ。

政権発足当初は、地方からの陳情の窓口を当時の小沢一郎幹事長が1つにまとめて一本化した。小沢氏は自民党的体質というものをよくわかっているから、陳情を一手に引き受けて、金の分配もコントロールできた。

そうした役割を小沢氏に専念させていれば、民主党政権はもう少し踏ん張れたのかもしれない。ところが自民党の生命線である運び屋的機能というものを理解していなかったために、内輪揉めの理念闘争の結果、小沢氏を党から追いやってしまった。

結果、地方とのパイプが寸断されて、先の選挙では原口一博氏などの大臣経験者でさえ、小選挙区で落選した。

自民党政権の特質の3番目は、「継続性を担保する形になっていない近隣外交」である。