基本に慣れてきたら、応用編。栗田先生によると指回しには2つの概念があり、目的に合わせて、回し方の使い分けが可能であるという。
ひとつは、巧緻性(たくみさ・器用さ)。これは互いの指を接触させずに、中指と薬指をどれだけ回せるかで調べることができる。巧緻性は、頭の回転の器用さ、上手な頭の使い方と関係していて、ここで重要なのはコントロールであり、速さは気にせず回数を増やすことに集中する。これを意識することで体調や頭脳の状態が整う効果が期待できるという。
もうひとつは、敏しょう性(速さ・スピード)。30秒間に何回回せるかで調べることができる。敏しょう性は頭の回転の速さと関係しており、これを求めるときは指同士が触れても、ドームが崩れても構わないという。崩れてしまったら、元に戻して再度チャレンジすればいい。スピードの追求に徹するのみ(回数の目安は図を参照)。勉強やテスト前の「さあ、やるぞ!」というときは敏しょう性を重視するとよいそうだ。
「巧緻性と敏しょう性とでは脳の違う部分を使うので、ターゲットをはっきりさせてやりましょう」
指回し体操は、知的能力を高める効果以外にも、自分の調子を知るうえでのセルフチェックにも応用できるという。調子が良いときは指がよく回り、悪いときは回らない。そのときの自分のコンディションが顕著にわかる。確かに、調子が悪いときに勉強をしてもはかどらず、効率が悪い。
「指がよく回るときに勉強をすると、1日の時間を賢く使うという点でも役に立ちます」
栗田先生いわく、指回しは基本ルールがあるものの、実際は難しく考えずに、自由にやってよいのだという。絶対に目標回数に達しなければいけないということではなく、基本の30秒というのも「あくまで目安」と強調する。
指が開きにくい人であれば、指の間を反対の手のこぶしで広げてみる。どうしても回すのが苦手であれば、片方の手の指を1本ずつ、反対の手を使って回し、感覚をつかんでからでもよい。本人の快適さに合わせることで、体調の改善、感情や情緒を落ち着かせるメリットもある。試験前でイライラしたり、緊張しているときに、ゆったりと椅子に座って回せれば、緊張状態をほぐすリラックス法にもなるのだ。
「指回し体操は心と体、両方のウオーミングアップが短時間でできます。忙しい受験生にはおすすめですよ」
いろいろな効果が得られるという指回し体操。試験前の不安を取り除きたいとき、ふと思い出したときでもいい、指を回してみてはいかがだろうか。“ご利益”は、テストの点で確認いただきたい。