シェールガスの恩恵は5~8年後
シェールガス革命でアメリカのガス価格が暴落していることを受け、ヨーロッパ勢はロシアに対して値下げのプレッシャーをかけているが、日本向けLNGは原油価格にリンクしているため、値下げの話にはならない。
アメリカのガス価格が大きく値を下げているのに、原油価格がそれほど下がらないのはなぜか。石油化学のプラントがGTL=ガス・トゥ・リキッド(天然ガスから液体燃料を作ること)に取って代わられるまでには5年、10年という時間が必要だからだ。
現状では、石油会社としては焦って原油価格を下げる必要がないため、いまだに1バレル=80ドルを超えている。シェールガスを原料とする石油化学産業のGTLプラントが完成すれば原油価格はいずれ半分以下になると思うが、今はその端緒だ。
そうした状況下で、高い石油と高い天然ガスを買い続けているのが日本である。今後、円安が進めばエネルギー調達コストはさらに増すだろう。
2月23日に開かれた日米首脳会談で、安倍晋三首相はオバマ大統領にシェールガスの対日輸出の早期解禁を要請した。
アメリカは戦略物資であるエネルギー輸出については慎重で、FTA(自由貿易協定)を締結していない国へのシェールガスの輸出は制限している。シェールガスは国内で使って、世界から投資を呼び込み、製造業の復活と雇用増につなげるのがアメリカの腹づもりだからだ。
しかしガス価格が暴落するほどシェールガス開発は進んで、このままいくと国内では使い切れずに余ってくる。だから、オバマ大統領も5月17日にシェールガスの対日輸出解禁に踏み切ったのである。シェールガス革命の恩恵にようやく日本もあずかれることになったが、そのためにはシェールガスをLNGに転換する施設をつくらなければならない。LNG基地の建設には最低5~8年はかかる。結局、LNGのプロセスが必要な分、シェールガスが輸入できるのはまだ先で、輸入できても割高にならざるをえないのだ。