たしかに離島にも1枚50円ではがきを届けるサービスを維持していくには、多少のことに目をつぶる必要があるのだろう。良質なサービスを受けたい人は、料金を上乗せして書留などのサービスを利用すればいい。
ただ、目をつぶれることにも限度がある。じつは一般郵便は、配達員の故意によって生じた損害に対しても賠償を認めていない。たとえば配達員が年賀状などの郵便物を配りきれずに廃棄するという事件は毎年のように起きている。未配達の年賀状の中には高額賞品が当たっているものがあるだろう。こうした悪質なケースでも賠償を認められないのは、さすがにおかしい。
百歩譲って会社への損害賠償請求ができないとしても、故意で損害を発生させた配達員個人に賠償を請求できないのか。
「民営化以前は郵便局員は公務員でした。公務員の行為には国が責任を負うことになっているため、被害を受けた人が直接、配達員個人の責任を問うことはできませんでした。民営化で個人を訴えることも可能になりましたが、配達員個人の賠償責任を認めると、配達員という職業のリスクが高まって、結局は郵便法第一条の趣旨に反することになります。しかし一方で、故意の場合は、会社のコントロール外だと解釈すれば、郵便法と関係なく不法行為として損害賠償を請求できる可能性があります。配達員個人に賠償請求できるかどうかは、法律家の間でも解釈が分かれています」(同)
会社はもちろん、個人も訴えにくいとなると、泣き寝入りするしかない。せっかく民営化したのだから、もう少し何とかしてほしいものである。