市場で続く供給過剰円安効果引き出せず

新造船ゼロという歴史的危機が。円安進行でも、世界シェア7割超を占める中韓勢に伍していくのは容易ではない。(PANA=写真)

両社に限らず、コスト面で劣勢に立たされる中国勢、韓国勢との競合、さらに「2014年問題」が象徴する縮む一方の需要を前に事業縮小も含めた抜本的な事業構造見直しは、国内造船業界全体に共通した問題だ。実際、造船・重機4位の住友重機械工業は今年3月末の受注残が2隻にすぎず、造船事業存続に向け、生産人員の大幅削減という縮小均衡で凌ぐ。13年3月期には、横須賀造船所(神奈川県横須賀市)の土地、生産設備の減損処理により、164億円の特別損失を計上し、最終利益を1月予想の130億円から55億円に下方修正した。

三菱重工も安泰とは言えず、100年超の歴史がある神戸造船所(神戸市)で商船建造を打ち切るなど国内での建造能力の削減に動いた。同社は一方で、造船専業最大手の今治造船(愛媛県今治市)と液化天然ガス(LNG)運搬船の設計・販売で今年4月に新会社を設立したほか、やはり専業の伯方造船(愛媛県今治市)と小型コンテナ船の共同開発で提携するなど、韓国との競争力がある専業大手との提携を矢継ぎ早に打ち出した。さらに、インドや中国の造船企業に技術供与し、海外事業展開に乗り出すなど、造船事業のてこ入れに躍起だ。川重も、中国やブラジルの企業への出資などを通じ、国内造船大手で先行してきた海外事業を加速し、生き残りを目指す。

しかし、08年秋の「リーマン・ショック」以降の世界的な造船需要の縮小に加え、韓国勢、中国勢が建造能力を大幅に増やしてきた結果、世界の造船市場は供給過剰が続き、国内造船大手の生き残りは容易でない。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による円安効果で、中韓勢とのコスト競争は和らぐとはいえ、パイの拡大が見越せない中で円安効果も引き出せないのも現実だ。かつて日本のお家芸として世界市場を席巻し、2度の「造船不況」を乗り切った造船大手にとっては、「2014年問題」は事業存続を懸けた最大の危機。川重、三井造船両社に限らず、生き残りを懸けた業界再編は待ったなしの局面を迎えている。

(PANA=写真)
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