いま考えるべき「終活」とはなにか
いま僕が提唱しているのは、貯蓄の反対の「減蓄」というものです。これからは「減蓄家」という肩書を使おうかと思っています。だいぶ資産が増えて、持っているものも増えてきた。だから、手持ちの資産を順次処分しつつあるんです。それを死ぬまでに使い切って死にたい。資産を残しても、死んで持っているわけにはいきませんし、残された子供が相続争いするのが関の山です。これぞ究極の節約じゃないかと考えています。
投資の中で一番確実なのは、子供への投資です。子供が1人前にプロフェッショナルとして食っていけるだけの教育を親が与えてやる。そこさえきちんとやっておけば、親が死んでしまったあとでも、子供たちはしっかり独立できる。親の財産をあてにしなくてすむのです。
死ぬまでに何をするかという“終活”について皆さんの前で話す機会が最近ありました。いつ死ぬかは誰にもわかりませんし、今の日本はこれから先が読めない時代になりました。だからこそ自分がどうしたいかを明らかにする。惰性で暮らすのではなくて、今の時点でビジョンを立てておくことが大切です。
1949年、東京生まれ。作家。国文学者。慶應義塾大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。専門は日本書誌学、国文学。著書に『イギリスはおいしい』『節約の王道』『「時間」の作法』など多数。『謹訳 源氏物語』は源氏物語の完全現代語訳、全10巻。