「ポツンと一軒家」に住み続けるリスク

車で移動するのが前提とすると、予算に合わせて気に入った家を買えば、立地はそこまで重視しなくていいと思われるかもしれません。しかし、郊外であっても立地は非常に重要です。今後、郊外エリアでは立地適正化計画にのっとって、街のコンパクト化が進められていきます。駅やショッピングモールなどが集まる中心エリアから離れすぎると、居住誘導区域から外れる恐れがあります。

長嶋修『2030年の不動産』(日経プレミアシリーズ)

もし、買った土地が居住誘導区域外になってしまった場合、すぐさま何かが変わることはないとしても、徐々に行政サービスの提供が減り、最終的にゼロになります。ゆくゆくは行き交う人がいなくなり、治安が悪化するリスクも高いでしょう。

そんなところに住み続けるわけにもいかず、家を売りたいと考えたとしても、居住誘導区域外の地価はほとんどゼロになるため、売るに売れません。

買い手からするとたまったものではありませんし、そんな土地に家を建てて売るなよ、と住宅メーカーに文句の一つも言いたくなるところですが、自治体と住宅メーカーはそもそも見ている方向が違います。後者は営利が目的であり、都市計画を第一に考えているわけではありません。貧乏くじを引かないようにするには、家を買う前に自分で自治体の都市計画について把握し、自衛するしかないのです。

マンションと同様、戸建も中古が中心に?

居住誘導区域の地価は、誘導区域外からの移住者によるニーズもあるため、維持もしくは上昇する可能性があります。その中で戸建を買おうというとき、メインの選択肢は中古住宅になる見通しです。

この先人口が減り、大手住宅メーカーは海外シフトの方針を明確に表し、住宅建設に携わる技術者も減り、資材価格が高騰するなか、新築戸建の供給は減っていくと見られるからです。すでに、新築住宅の着工戸数は毎年ゆるやかに減少し始めています。

マンションでは新築物件の販売価格が吊り上がり、富裕層でなければ手が出ない状況になりつつありますが、立地適正化計画が進んだ世の中では、新築の戸建もまた、資金力のある実需層のみが買えるものとなるかもしれません。

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