不合格家族――「教育ママになりたくない」ゆえにすべての方針が中途半端

難関女子校・フェリス女学院を目指していた由香さん(仮名・以下同)の母親・なつきさんは、女優の高畑淳子似で、性格が大らかな「子供の自主性」を尊重するタイプ。もともと中学受験にこだわっているわけではなく、公立小学校で感じた「公立への不信感」から「いい学校へ行けるなら私立へ」という程度の考え。私立の本当のよさを理解しているわけではないし、難関校受験のシビアさを覚悟しているわけでもなかった。中途半端さは塾選びにも表れていて、フェリス女学院の合格実績を挙げている大手塾にこだわらず、雰囲気重視で規模の小さな塾に通わせていた。

小川によると、この塾の方針が実に不可解。受験直前の12月になって、初めて入試向け問題集を由香さんに与えたのだが、フェリス女学院の過去の出題傾向を考慮した内容ではなかった。なつきさんは「疑問を感じた」というが、塾に何らリクエストすることなく、由香さん本人は寝る時間も惜しんで問題を解いた。しかし、入試結果は惨敗だった。

「併願プランの戦略も不十分だったため、偏差値が40台の中高一貫校にしか受からず、本人が大きな失望感を味わった時点で、母親が高校受験でリベンジさせたいとうちに相談にみえたんです」

なつきさんを含め、知的で思いやりの深い親ほど、小学生からの早期の能力開発が、子供の成長を阻害するという考えを持っていると小川は指摘する。

「親自身が暗記型の受験勉強をしてきた場合が多いですね。こういった受験を経験された方は、本当の意味での思考力や、芸術面での感性を伸ばせなかったと後悔している。このタイプは子供を進学塾に通わせておきながら、受験テクニックよりも思考力を伸ばしてほしいと思っている。また、子供には塾のテストを頑張りなさいと言う一方で、『でも嫌だと思ったら、無理に勉強しなくてもいいわ』と言ったりもします」