「退会」も任意である

しかし、入会申込書がない限り、PTAは、誰が会員なのかが分からず、会員名簿を作成できない。そうなると、総会を開くことができず、あらゆる意思決定ができなくなる。会員を入会申込書によって把握するのは、PTAを法に則って運営する場合、必須の手続と言える。

また、任意加入団体は、退会も任意である。もちろん、会費等の処理のため、規約上、退会期日を月末に限ったり、退会申出は1か月前までに行うことを求めたりすることはできよう。ただし、「一度入会した会員は退会できない」とか、「退会時は100万円の罰金」といった規約は、加入者に過大な負担を課すもので、公序良俗に違反し、無効と考えるべきだろう(民法90条参照)。

(2)個人情報取扱事業者としてのPTA

PTAには、適切に個人情報を取り扱う義務があるという点も重要である。旧個人情報保護法は、5000人以下の個人情報を扱う事業者を適用対象外としていた。ほとんどのPTAは、会員数が5000人を下回っていたため、同法の適用対象外だったのである。しかし、2017年5月30日に、5000人の下限を撤廃する改正法が施行され、PTAも、同法の適用を受けることとなった。

日本の高校の建物
写真=iStock.com/coffeekai
※写真はイメージです

“学校からの情報提供”が違法の可能性も

PTAとの関係で、重要なのが、同法20条の「個人情報取扱事業者は、偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない」という規定である。PTAの中には、学校から、保護者や在籍児童・生徒の名前や所属学級などの個人情報の提供を受けるものもある。学校が全員から同意をとっていれば問題はないが、そうでない場合には、学校からPTAへの個人情報の提供が第三者提供として違法となる可能性が高い。

(なお、学校が同意をとる際には、保護者に対する強制・抑圧の契機を払拭ふっしょくするよう細心の注意が必要となる。PTA加入を強く勧めるような表現や、加入が当然であるかのような表現によって同意を獲得することは許されない)。

また、PTAが、保護者に加入義務があるかのように誤信させて個人情報を提供させた場合には、「偽り」による違法な個人情報の取得となる。

個人情報保護法を遵守しようとするならば、会員や保護者の個人情報は、PTAが自ら同意をとって提供を受けるべきだろう。また、個人情報の提供を受ける際は利用目的を明示し(同法17条)、かつ、提供を受けた個人情報はその目的の範囲で利用せねばならない(同法18条)。これらの規定に違反した場合、個人情報保護委員会から勧告や命令を受けることがあり(同法一四八条)、命令違反の場合には罰則もある(同法178条)。