広い部屋をあきらめ、トランクルームを利用する都会の住人
町で見かけるトランクルームも増えた。2024年7月3日の日経MJ記事「トランクルーム市場770億円、23年最多58万室、家賃高騰映す」によれば、トランクルーム市場は15年連続で拡大中で、ファミレスの店舗数より多い。拡大の要因は居住面積の狭小化で、延べ室数の約4割が東京23区に集中している。
日本経済新聞電子版の2024年6月24日記事「トランクルーム市場、15年連続で拡大 民間調査」によると、国交省が定める1人暮らしに最低限必要な面積は25平方メートルだが、都心で若者が求めるのは10~20平方メートルの物件。私は昨年刊行した『日本の台所とキッチン 一〇〇年物語』(平凡社)で、元デベロッパー勤務のKさんから「昔は3LDKは七〇平方メートルないと厳しいと言われていたのに、今は五〇平方メートル」と、ファミリー物件についての業界事情を聞いている。
都会の住人の中には、部屋を広げることを断念し、あふれたモノはトランクルームに収納しやりくりする人が増えているのだ。そもそも広い賃貸物件が少ないのに加え、首都圏では家賃に2年ごとに加わる更新料がトランクルームにないので割安、という側面もある。
ミニマリストを目指す動機は何か
ミニマリストになれば、そうした悩みとは無縁になりそうだ。『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』と、当事者に取材した『ミニマリストという生き方』(辰巳渚、宝島社)で実状を確認しよう。会社員の編集者だった前者の著者、佐々木は、モノがあふれる生活をしていた過去は、かっこつけようとモノを持っていただけと自己分析している。大量の本もカメラのコレクションもギターも手放し、思い出の手紙や写真はスキャンして現物を捨てた。その結果、機敏な行動力と健康的な生活、自分に何が必要か見定める姿勢を手に入れ、日々幸せを感じているそうだ。
後者の本は、2000年に『「捨てる!」技術』(宝島社)で一世を風靡し、モノを減らす片づけ術を初めて紹介した辰巳渚が取材している。取材相手には、「ときめくかどうか」を基準にする片づけ術で一世を風靡した近藤麻理恵(こんまり)に影響を受け、ミニマリストになった人が目立つ。
佐々木は著書で、自分がモノを捨て始めたきっかけは書いていない。しかし、「汚部屋からの反動ミニマリスト」と記し、一般的な動機として「モノのせいで人生が狂っていく様子を間近に見た人、いくらモノを集めてもちっとも幸せでなかった大金持ちの人、引っ越しが多くて徐々に荷物を減らした人、鬱病からの脱却を図った人、もともとモノに執着がない人、震災を経て考え方が変わった人」を挙げている。同書によれば、ミニマリストとは単にモノを持たない人ではなく、「自分に必要なモノがわかっている人」「大事なもののために減らす人」だ。