「情報交換」が「情報搾取」に変わるとき

世の中には、名刺を交換して数人と会話するといった「情報交換」の場がたくさんあります。僕は、こうした場が時間やお金だけでなく「情報搾取」の場になり得ることも、みなさんに知っておいてほしいと思っています。

あくまで僕の経験則ですが、自ら進んで「情報交換しましょう!」と寄ってくる人たちが、本当に交換する価値がある情報を持っている確率はかなり低いのです。

もちろん、交換する価値がある情報をお互いに持っているなら、win-winのコミュニケーションが成立します。自分が「Aを知っていて、Bを知らない」という状態で、相手が「Bを知っていて、Aを知らない」のであれば、情報交換によって両者ともAとBを知っている状態になるため、そのコミュニケーションには価値が生まれます。

しかし、自分が「Aを知っていて、Bを知らない」ときに、相手が「AもBも知らない」状態では交換が成り立ちません。

Bの知識を得られると思って会ったのに、相手がBのことを知らず、にもかかわらず「Aについて教えて!」と一方的にねだられるのが、情報交換の場でよく起こる不均衡のパターンです。

写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです

「知っている」の感覚は人によって違う

これが相手に関するリサーチ不足だったならまだ自省できるのですが、酷い場合には、相手がBについて知っているように見せかけながら、実情はBについて聞いたことがあるという程度でも、堂々と現れるような事態もよくあります。

自分は「Aを100%知っていて、Bは10%知っている」状態で、Bに詳しそうな人に会ったはずが、相手は「Aについてはゼロ、Bも5%しか知らない」というアンバランスな状態で“情報交換”をする羽目になるというわけです。

ちなみに、なぜこのようなことが起きるのかと言うと、お互いが考える基準や単位が明確ではなく、ずれているからです。

要は、ある事項について10%知っている状態を「知らない」と考える人と、5%知っている状態を「知っている」と捉える人がいるということです。そうして先に述べたように、自分が5%しか知らないのに、自ら進んで「情報交換しましょう!」と近づいてくるというわけです。

これらの基準や単位は主観的なものであり、世の中に基準となる明確な数値もないため、よくこうしたことが起こるのです。