あえて贈与税控除110万円を超えて、毎年111万円を贈与する方法もある。控除分を差し引いた1万円に贈与税がかかるが、200万円以下の贈与税率は10%なので、支払うべき税金は1000円のみ。毎年1000円を納めることで、連年贈与でないという強力な証拠を得られるなら、安いものだろう。

同じ生前贈与でも、毎年の贈与額に対して課税する「暦年課税」ではなく、「相続時精算課税」で贈与する選択肢もある。この制度を利用すると、贈与時に贈与税を一度支払い、相続時には生前贈与の価額と相続財産の価額を合計して改めて相続税を計算。算出された相続税から、すでに支払った贈与税を差し引いて納税することになる(支払った贈与税のほうが多ければ払い戻しに)。

相続税の前払いに見えるかもしれないが、利点はいろいろある。たとえば贈与時に3000万円だった土地が相続時に1億円になっていた場合、合算時も贈与時の評価時の3000万円のままで計算してもらえる。また所有するアパートを贈与すれば、その後発生する賃貸収入が親ではなく子どもの財産になるため、相続財産を実質的に減らすことも可能だ。相続時精算課税を選ぶと、暦年課税と併用できず、一度選ぶと暦年課税に戻ることはできないというデメリットもあるが、値上がりが見込めたり家賃収入が得られたりする不動産を持っている場合は、検討に値する。

親が住んでいた家を相続させる相手も重要だ。非相続人の居住に使われていた宅地を相続した場合、宅地の評価額を一定割合、減額してくれる「小規模宅地等の特例」という仕組みがある。たとえば同居していた配偶者(妻)が相続すれば、240平方メートルまでの宅地について、評価額を80%減額してもらえる。1億円の宅地なら2000万円の評価額になるわけだ。子どもに相続させる場合、親と同居している兄弟Aや賃貸暮らしの兄弟Bなら特例が適用されるが、独立してマイホームを持っている兄弟Cは適用外に。誰に相続させるかによって相続税の額が大きく変わるので、慎重に検討してほしい。

(構成=村上 敬)
関連記事
偏差値が上がる節約、下がる節約
年収別に試算「一体、手取りはどれだけ減るのか?」
子ども手当廃止、消費増税で家計改造が急務!?
消費税10%での負担増、年収1000万円でいくら?