冷凍餃子は工場で「手間暇をかけ」作られているという論理

自社の冷凍餃子は「大きな台所」である工場で、消費者に代わって原料を吟味され、多くの“手間”暇をかけて丁寧に作られている。そのことに広報担当の女性社員が自信と誇りを持っていたことも、即座の投稿へとつながった。日頃より社内で「栄養価も高い冷凍餃子を使うことで、料理の『手間』暇をかけずに家族の時間を創出してほしい」という会話を行っていたことも大きく寄与しているだろう。このツイートには、“44万いいね”がつき、大きな反響を呼んだのである(ご記憶にある読者の方も多いであろう)。

消費者が持つ固定概念を払拭し、自社商品のよさを正しく消費者に伝えようという考え方が社内に浸透していたことの賜物と言えよう。

同社はその後、消費者に代わり如何いかに手間をかけているか正しく理解してもらうために、動画を制作した。144に及ぶ餃子を作る工程を、限られた時間のなかで分かりやすく丁寧に説明をした動画だ。手作業でキャベツをカットし、具材をこね、薄い皮へ具材を包み込み、皮の弾力を高めるため蒸し上げる。その工程一つ一つが丁寧に語られている。

餃子作りの144工程を動画で見せ、合理性をアピール

20年10月に1分15秒の動画がアップされ、直後に大きな反響を呼び、90万回近くの再生があったという。工場の従業員一人ひとりが担う、その手間の一つ一つが丁寧に語られている動画の最後には、「最後の仕上げは、あなたのフライパンで。」というメッセージが提示され、味の素冷食から消費者への共同作業であることを強く印象付ける。視聴した消費者は、企業と自分との間に、売り手と買い手という構造ではない関係性を感じるだろう。この動画によっても冷凍食品の固定概念は払拭され、栄養価の高い冷凍食品を選ぶ、手間抜きの合理性を広めることとなった。

撮影=プレジデントオンライン編集部
※写真はイメージです

更にこうした活動は、味の素冷食の従業員のモチベーション向上と繫がっていった。撮影を行った関東工場のみならず、他の生産現場でもモチベーションは向上し、営業の現場においても、動画が広まると同時に、その価値を流通現場などに正しく理解をしてもらおうという動きに繫がっていったのである。