「高気密住宅は息苦しい」のウソ

高気密住宅に対する根強い誤解として、気密性能が高くなると、隙間からの換気が行われなくなり、息苦しくなるというものがあります。これも完全に誤解です。

むしろ、高気密住宅のほうがきちんと換気が行われ、家中の空気が新鮮な状態が保たれます。ちょっと不思議に思う方も多いかと思いますが、次のような理由によります。

前提として、現在の新築住宅は、機械換気による24時間換気が大前提になっています。2003年に、シックハウス症候群が社会問題になっていたことを受けて、改正建築基準法が施行され、新築住宅では、0.5回/h以上の機械換気設備(24時間換気システムなど)の導入が義務付けられました。

つまり、現在の新築住宅は、窓を開けることやすきま風による換気ではなく、24時間換気システムによる換気が前提なのです。つまり、気密性能が高いから、換気されず息苦しいということはありません。

実はむしろ逆で、気密性能が低い家では、24時間換気システムによる計画換気がきちんと機能しません。

隙間だらけの家はむしろ空気がよどむ

図表6上の図のように、換気は、家の全体で、給気口から排気ファンに空気が流れるように計画します。ところが下図のように、排気ファンのそばに隙間があると、隙間から給気されてしまい、本来の計画換気の空気の流れが起こらなくなります。

そのため、気密性能の低い家では、計画換気が機能せずに、空気がよどんだり、結露が生じたりするのです。

図表7は、横軸が気密性能(右側ほど低気密)、縦軸は給気口から給気される割合を示しています。例えば、C値5.0(一般的な戸建住宅の気密性能)では、17%程度しか給気口から給気されずに、83%は隙間から給気されるのです。

C値が1.0になるとやっと50%が給気口から給気され、0.5になると約67%が給気口から給気されるようになります。不思議に聞こえるかもしれませんが、計画換気をきちんと機能させるためには、高気密にすることが必要なのです。

気密性能を確保していないのに、凝った換気システムを導入している家が散見されますが、それはあまり意味がないことであることがおわかりいただけると思います。

「木造、鉄骨、RC造」どれを選ぶべきか?

さて、戸建住宅で高気密住宅に住みたいと思ったら、構造は何を選ぶべきなのでしょうか?

戸建住宅の構造は、基本的には、木造(在来軸組工法、2×4等)、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)のいずれかです。ただし、鉄筋コンクリート造は建築コストが高いため、あまり一般的ではありません。コスト面から、木造か鉄骨造のいずれかが一般的ですが、気密性能にこだわるのであれば、木造の一択になります。

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鉄骨造は、気密性能の確保が苦手なのです。鉄骨造は、温度による伸び縮みが大きいために気密性能を維持しにくいためではないかと言われていますが、少なくとも鉄骨造のハウスメーカーで、気密性能を売りにしている会社はないと思います。

気密性能は、C値で示されると説明しましたが、C値はどのように算出するのでしょうか?

断熱性能のUA値は、図面を基に机上の計算で算出できます。ところが、気密性能は、現場の気密施工のレベルに依存します。そのため、現場で写真のような機器を使用し、気密測定を行い、C値を算出します。

目標値に届かなければ隙間を埋めていく

窓に目張りして取り付けられたこの機械の筒部分には、強力なファンがあり、室内の空気を排出します。すると、室内外に気圧差が生じ、室内が負圧になります。そのため、隙間から風がぴゅーぴゅーと入ってきます。その気圧差の変動を基にC値を算出します。

気密測定を実施している住宅会社の場合、一般的には、C値の目標値を設定しており、目標値の性能が確保できていなければ、隙間を探して埋めていく作業を行います。これはかなり手間のかかる作業であり、気密性能の確保には、それなりにノウハウが必要です。そのため、気密測定を全棟で実施している住宅会社はかなり限られるのが現状です。