基準が厳しければ床暖房は必要ない

それに対して、現在の日本では、気密性能に関する基準は定められていません。つまり、どんなに隙間だらけの家でも、違法ではないですし、新築住宅がどんなに「隙間だらけで寒い」といっても、クレームの対象にはなりません。

日本では、かつてC値5.0以下というとても緩い基準が存在していましたが、現在は不思議なことに、この緩い基準すらなくなってしまっています。

【図表】世界の気密水準
筆者作成

日本の住宅は、足元が寒いため、床暖房に人気があります。高気密・高断熱住宅では足元が寒くなりません。そのため、床暖房がなくてもとても快適に過ごすことができます。

高気密・高断熱住宅では足元が寒くならないのには、2つの理由があります。

1つ目は、断熱性能を高めると、「コールドドラフト」という現象が起こらなくなるためです。「コールドドラフト」というのは、断熱性能が低い家では暖房で暖められた空気が軽くなり上昇しますが、壁や窓が外気の影響で冷えているため暖気が壁等に触れて冷やされて重くなり、足元に降りてくる現象です。これではどんなに暖房を使っても足元は暖かくなりません。

断熱性能を高めると、室内側の壁や窓が外気の影響をあまり受けなくなるので、コールドドラフトが起こらなくなるのです。

【図表】コールドドラフト
出典=住まいるサポート

サーモカメラで撮影すれば一目瞭然

もう一つの理由は、気密性能が低いと、暖められて軽くなった空気が上昇し、天井や屋根の隙間から逃げていき、その分の空気が床下や足元の隙間からすきま風として入ってくるため、足元が冷えるのです。

高気密の家は、当然、すきま風がほとんど生じないため、すきま風で足元が冷えることはありません。

【図表】隙間風の図
出所=東京大学前研究室

高気密・高断熱住宅ではこれらの現象が起こらないため、足元が冷えなくなります。そのため床暖房がなくても、とても快適に過ごすことができます。図表5は、断熱性能の異なる部屋をサーモカメラで撮影したものです。真ん中の省エネ基準レベル(一般的な分譲住宅・注文住宅レベル)の家に比べて、断熱等級6レベルの家は、足元が冷えていないことがよくわかると思います。

【図表】断熱気密性能の違いによる温度分布の違い

高気密・高断熱住宅の暮らしが快適なのは、他にも、壁や天井からの輻射熱の影響が少ないことや、エアコンが必要以上に頑張る必要がないため、エアコンの風を感じにくくなるなど、さまざまな要因があります。それらについては別の機会に詳しく説明したいと思います。