税金よりも会社の手当のインパクトの方が大
税金以上に大きいのが配偶者手当の存在です。人事院の「令和2年職種別民間給与実態調査」によると、家族手当制度を実施する企業の割合のうち、配偶者対象のものは79.1%で、半数ほどの企業では支給対象の条件が対象者の年収103万円以下に設定されています。
また、厚生労働省「令和2年就労労働条件総合調査」によると、家族手当などの支給額は月平均1万7600円。企業規模別にみると1000人以上が月2万2200円に対して100~299人が月1万5300円など、大企業ほどその額は大きくなります。
はっきり申し上げて、税金は、壁を超えた分に対してのみかかるので、みなさんが気にするほど負担が増えるわけではありません。年収103万円程度であれば、所得が1万円増えても、支払う税金は500円程度。たかがしれています。
それよりもインパクトが大きいのは会社からの手当で、「これがもらえる間は、働きに行かない!」という人も少なくありません。
そして、壁問題で注意すべきなのは税金ではなく、社会保険料です。つまり、夫の扶養から外れ、社会保険料の負担が生じる「130万円の壁」です。
ここにも改正が行われ、16年10月から、社会保険の適用範囲が拡大。一定の条件を満たしたパート等は、年収106万円以上で厚生年金保険料や健康保険料(40歳以上は介護保険料も)を負担しなければなりません。新たな「106万円の壁」の出来上がりです。
ちなみに、妻(39歳以下)のパート収入130万円の場合、社会保険料(協会けんぽ)は月額約1万5500円。年間約18万6000円になります。極端な話、129万円で、社会保険料を払っていないほうが手取りは多くなり、逆転現象が起きてしまうわけです。
これを整理すると、実は壁は6つもあります。「いろいろな壁があって、結局いくらで働くのがオトクなの?」という悲鳴が聞こえてきそうです。
夫の年収や配偶者手当等の有無によって変わりますが、目安として、1円たりとも税金を払いたくないなら100万円以下(自治体によっては課税される場合もある)。税金よりも社会保険料の負担が大きくなりがちなので、社会保険加入のボーダーラインが130万円で、育児や介護等で働くのが難しくできるだけ手取りを減らしたくないなら129万円以下に抑えて夫の扶養の範囲内で働く。それ以上は140万~150万円を超えるくらいまで逆転現象が続きます。
なお、150万円を超えると、配偶者控除を受けられなくなるため、今度は夫の税金が増えてきますが、これもそれほど気にする必要はなし。社会保険料を負担するのなら、おおよそ155万円前後で手取り回復の分岐点がくるので、それを目指すのが良いでしょう。