「辞めてくれていいのに」と思うこともあったが…

ところが気の利いた子は、利発なものですから、利発な分だけ仕事にすぐ飽きて面白くなくなってしまい、不満を漏らすようになります。そして3年、4年経つうちに「辞めたい」と言うようになって、「自分は頭もよいし、もっとよさそうな世間の会社に雇ってもらおう」と考えて辞めていくのです。

「頭がよくて気が利いて、あんな子が残ってくれなきゃ困る」と思っていた人に限って辞めていき、「こいつは鈍で、あんまりパッとせんな」と思う人がいつまでもがんばっているわけです。

「こんな奴は辞めてくれて、あの気の利いた奴が残ってくれればいいのになあ」と思うこともありました。

ところが、私は間違えていたのです。残っている鈍そうに見える人が、実はすばらしい仕事をし、すばらしい京セラをつくり上げてくれたのです。

継続は「鈍な人」を「非凡な人」に変える

少し鈍に見える人は、いつまでも鈍ではありません。つまり、継続するということで、愚鈍な人が名人、達人に変わっていくのです。

継続は鈍な人を非凡な人に変えるのです。

稲盛和夫『「迷わない心」のつくり方』(サンマーク出版)

一生涯を通じて一つの仕事に精通し、打ち込むことで、名人、達人と呼ぶべき人になったのです。子どもの頃から頭がよくても、元から名人、達人といわれるような人は一人もいません。長期にわたる努力が必要なのです。鈍な人のほうが、地味な仕事を一生涯を通じて、不平不満を漏らさずに努力することができるのかもしれません。

ですから、私はみなさんに、どんなことがあっても辛抱して努力をするべきであると申し上げたいのです。そうすれば、運命というものはすばらしく好転していきます。

世の中で名人、達人といわれる人、また非凡な人だといわれる人は、みんなそういう努力をしてきた人です。エジソンのように偉人と呼ばれた人はみんな、人には語れない苦労を続けてきた人ばかりなのです。

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