お互いが助け合い、認め合っている関係

また、自己肯定感とは、コミュニティの中で自分が必要とされているという意識があるかという考え方。

調査では具体的に「日ごろからあなたは見栄を張らず、自分らしく生きていると思いますか」「日々の暮らしの中で誰かに愛されていると感じる」「自分を仲間だと認めてくれる人がいる」「周囲に自分を頼ってくれる人がいる」といった質問についてすべてにイエスと回答した人をスコアにしています。

そして、やはりここでも本音・共鳴・シェアが一体化しているほど、自己肯定感が高いという結果が出ました。心理的互助性にも現れていますが、お互いが助け合い、認め合っている関係が自己肯定感を作り出しているといえそうです。

日本では当たり前のように見える現象かもしれませんが、関西人が本音のコミュニケーションを通じて信頼を高め、お互いの力を引き出しあったり、助け合ったりしてビジネスをまわしている姿が目に浮かびます。

無意識にこうした個性を生かしたり、互助関係を作れていることが、チャレンジを促す風土につながっているようにも思えます。

なんでも「おもしろがり体質」が幸福感につながる

このように見てくると、関西の人の幸福感というのは、やはり本音で語る文化、そしてそれが共鳴し拡散することで幸福感をも共有できるといったサイクルが生まれていることに起因していると考えられます。

こうした「おもしろがり体質」というのは、幸福感にもつながっているのです。

最近ウェルビーイングという言葉が注目されています。ウェルビーイングという言葉は、様々なものを含むので、一言ではいいにくいところではある概念ですが、ある意味、関西人のウェルビーイングというのは、こうした気持ちの共有というところがあると考えられます。

博報堂DYグループのプロジェクトチームではこれを「omoroi-being」と表現をしています。確かに“おもろい”という言葉はただ単に“面白おかしい”という意味ではなく、互いの気持ちが共鳴できたときに出てくる言葉のように思います。こうした「おもしろがり体質」に着目すると、関西版ウェルビーイングとはまさに「omoroi-being」であると考えられます。

写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです

ただし、こうした風土は、関東の企業でももっていたものだと思います。企業の成果を個人成果に分解しながらマネジメントする欧米型の経営メソッドの普及によって弱まっている側面もあるのかもしれません。

また、個々人の主体性よりもヒエラルキーに準じた成果管理によって本音で話せる空気が弱まることもあると思います。個人のがんばりだけでは幸福にもなりにくい世の中ですし、本音で語り合う空気の根底にある“おもしろがる資質”なるものが集団での幸福感を生みだす力となり、日本の企業を元気にするヒントがあるように思います。