トヨタへの就職のほか、大学進学するケースも

高等部に入学すると通信制の科学技術学園高等学校にも入学したことになる。学校教育法に定める技能連携制度により科目はそのまま科学技術学園高等学校の単位として認定される。高校の卒業資格が取得できるわけだ。

さらに技能訓練も受けることができる。手当てももらえる。そのうえ、卒業後はトヨタへ就職することができる。2年間積み立てたお金でオーストラリアでのホームステイに参加することができる。

高等部・専門部から希望する生徒は卒業後、1年間の実務経験と配属された職場からの推薦、さらに社内選抜試験を経て豊田工業大学へ進学することができる。豊田工業大学の在学中は奨学金が支給され、卒業したらトヨタに入ることができる。豊田工業大学は入るのが難しい大学だ。そこへ無償で進学できるコースもある。一般の職業高校よりも恵まれた進学先があるわけだ。

もし、わたしが東海地区で生まれていたとする。自動車に関心がある中学生で、さらに「うちの家は私立大学へ進学する余裕はないだろう」と思ったとする。その場合、トヨタ工業学園へ進んだかもしれない。お金をもらって勉強ができれば親に負担をかけることはない。車が好きで自動車会社へ入ろうと思っていたならば大学へ行かなくともトヨタに入社できる。悪くない選択だ。

18歳から1年間学ぶ「専門部」とは

ただ、生徒たちに話を聞くと、親に負担をかけたくないということよりも、クルマが好き、モノ作りが好きということをはっきりと語る。ビジネスパーソンになりたいのではなく、クリエイター志向の人間たちだ。

専門部は高等学校(主に工業高校)を卒業した人を対象とした1年間の企業内教育のコースだ。高等部に入ってくるのは中学卒業者だから、15歳だけれど、専門部に入ってくるのは18歳である。学園構内に行って、専門部の校舎に行くと、すれ違う学生たちは高等部の生徒とは明らかに違う。立派な大人である。前述したが、専門部の最大の特徴は1年制の学校であること。同期はいるけれど、先輩、後輩はいない。

専門部が育成しようとしているのはカーエレクトロニクス、メカトロニクスなどのスペシャリストだ。実習の内容も先端技術で、シーケンス制御(あらかじめ定められた順序または手続に従って制御の各段階を逐次進めていく制御方式のこと)、ロボット、油圧制御、C言語プログラム、車載エレクトロニクスといったところだ。

専門部を卒業した学生は工場の設備保全部門、生産設備の製作部門、そして、車両や電子部品の試作・評価部門に配属される。先端技術の専門家集団だ。