「富める少数」と「そうでない多数」が一目瞭然!
ところで、それぞれのグラフの右端には、雲のような図柄があります。これは度数分布というもので、その雲が厚いところは、その金額になる人が多いと予測されます。逆に、雲が薄いところはその金額になる人が少ないと予測されているわけです。
雲の形に注目すると、下の方、つまり投資成果の小さいほうが雲は厚くなっています。図表4のように、運用期間が短いと偏りはごく小さく、ほぼ上下対称に近い(標準正規分布に近い形)ですが、運用期間が長くなると図表5のように上下に偏りが大きくなります(対数正規分布といいます)。一部の大きく儲ける人が平均値をひっぱり上げるので、平均値は中央値の上方に離れていきます。そのため平均値の実現確率は50%以下になることに注意が必要です。よくあるシミュレーションではこの平均値のラインのみが示されています。
投資の世界でも二極化が発生する
その仕組みを簡単に表すと、図表6のようになります。例えば、16人でコイン投げをしてみましょう。表が出ればプラス20%、裏が出ればマイナス20%というルールのゲームだとします。まずみんな100からスタートです。
1回目のコイン投げをすると50%の確率で表、50%の確率で裏が出るでしょうから、16人のうち8人がプラス20%の120、8人がマイナス20%の80になるとします。2回目、3回目、4回目とコイン投げを繰り返すごとに分布に偏りが出てきます。4回目が終わった時点では、1人が207.36、4人が138.24と利益を出しています。ただ、利益を出しているのはこれらの5人だけで、残りの11人は損を出しています。
このように運用期間が長くなるほど上下に偏りが大きくなっていくのです。この偏り方、ばらつき具合はリスクが大きいほど大きくなります。そして、平均値は中央値からどんどん離れていきます。
大きなリスクを取ることで金持ちになるチャンスが生まれます。ただ、実際にはそのごく一部の勝ち組の人たちと、それ以外の普通の人たち――増加幅の小さなプラスのリターンを得ている人も含む――に分かれていきます。私たちが住む社会でも同じようなことが起きています。社会の自由度が高い競争社会であるほど、偏りやばらつきは大きくなります。一部の大金持ちと、多数のそれ以外の人。世間でいわれている「二極化」と同じ現象が資産運用の世界でも観測されるのです。