悩んでいる生徒にする正しいアドバイス

Q 生徒が悩んでいるときはどうアドバイスする?

生徒が問題を解けずに悩んでいる――家庭教師にとってはよくあるシチュエーションですが、このとき生徒に対するアドバイスには大きく分けて2つの方向性があります。

これは多くの家庭教師の現場や塾で議論になる難しい二択です。ベテランの先生同士でも答えは異なりますし、教育学部の先生の間でも意見が分かれます。

この2つ、みなさんはどちらが正しいと思いますか?

A 悩んでも仕方ないので答えを教える
B 本人がギブアップするまで考えてもらう

要するに、答えを教えるか、悩んでもらうかの二択ですね。

なぜ議論が分かれるのかというと、どちらにもメリットがあり、どちらにもデメリットがあるからです。

まず「答えを教える」指導は、生徒がどんどん次の問題を解いていくように促せます。悩んでいても答えが出ない問題も多いですし、何度も同じような問題を解くことで「慣れる」ということもあります。ですから、多くのことを効率よく学んでもらうときにはAの指導方法が正しいです。

しかし、一見すると効率的な「答えを教える」指導にもデメリットがあります。それは、「悩む」という時間をカットしてしまっているところです。

昔の入試対策は「もぐら叩き」でよかった

実は、最近の中学入試・高校入試・大学入試では、答えを知っているだけでは解けない、「悩む」指導を経験している生徒でないと解けない問題が多く出題されるようになっています。

「教科書や参考書の知識をベースにしているけれど、おそらくどの参考書にも載っていないような問題」が出題される傾向が強いのです。

昔の入試対策は、「もぐら叩き」に例えられていました。同じような問題が何度も出てくるので、参考書や過去問を何度も何度も反復練習することによって、対策が可能になる。まるで決まった巣穴から「もぐら」が出てくるのを叩くかのように、たくさん対策したらその分だけ成績が上がる、と。

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しかし今は違います。今まで全く出て来なかった巣穴から「もぐら」が出るようになっているのです。

例えば大学入試にかつて存在したセンター試験は現在、共通テストに変わっていますが、共通テストではかなりの割合で「多くの受験生にとって初見の問題」が出題されています。

社会では今まで出題されたことがなかったグラフや統計データが使われることが多くなり、理科でも過去に出題された問題の焼き直しではなく、その場で改めて考えなければならない問題が多く出題されています。

これらの問題は、知識だけあっても解くことができません。いくら効率よく頭の中に知識を入れ込んでいたとしても、きちんと頭を使わなければ解けない問題が増えているのです。今までの「もぐら叩き」的な対策はもはや古いのです。