老後のお金にもっとも適しているのは「終身年金」

そもそも老後にもっとも役立つのは、「終身年金」です。いつまで生きるかわからないため、長生きするリスクに対応しているからです。一生涯受け取れる公的年金などが、これに当たります。

iDeCoや新NISAは、老後資金を準備する代表格です。これらは年金を受け取るまでの「中継ぎ」として考えるのが適切なのです。

60歳で定年を迎えたあとは、再雇用などで継続的に働く人が多いと思います。給与所得が生活費になります。そして再雇用も終わると、今度はiDeCo、新NISA、退職金、企業年金、老後資金などを生活費に充てます。

これが年金の繰り下げ期間中の生活費の基本になるのです。名古屋経済大学経済学部教授の谷内陽一氏も、iDeCoや新NISAなどの私的年金を繰下げ受給するための「中継ぎ」と位置づけ、「WPP」というネーミングで発表しています。

「WPP」とは、「Work longer(就労延長)」「Private pensions(私的年金)」「Public pensions(公的年金)」のことです。これを先発(就労延長)、中継ぎ(私的年金)、抑え(公的年金)と野球にたとえて解説しています。

私もこの意見に賛成です。

中継ぎの部分が私的年金だけでは足りない場合には、老後資金を使ってもよいという考えです。それが、老後のお金としてもっとも適している「終身年金」を充実させることにつながるのです。

60歳からのお金、運用より大切な考え方

新NISAは、とてもよい制度です。老後資金を準備する資産形成の時期には、ぜひとも活用してほしいと考えています。

では、資産形成が終わり、貯まった資産を取り崩す局面(資産活用)では新NISAは不要かというと、そうではありません。いくつかある選択肢のひとつになると思います。何もやらないより、資産寿命を延ばすことができます。

ただ、何ごとにも優先順位があります。この場合、新NISAよりも、年金の繰下げ受給のほうがはるかに効率的です。余裕資金がある場合の二番手の策として考えてください。

たとえば、年金待機中でも生活費の目途が立つのであれば、老後資金の一部を使って新NISAで運用するのもいいでしょう。年金の繰下げ受給と新NISAを併用すれば、老後資金はより安泰になります。