結局は金利動向

ここまでの推移を見ると、市場の動きは、金融政策、とくに金利の動向がどうなるかという思惑で為替相場や株価が動いているのが分かります。つまり、日銀の政策金利がこの先、上がると予想すれば、円高・株安傾向に、逆にこのままの状態が長く続くと考えれば、円安・株高傾向になると言えます。

そもそも金利と為替は日米金利差が大きく影響しますが、米国の政策金利をはじめとする金利動向も大きく影響します。米国では、9月のFOMC(日銀の政策決定会合に相当)で、それまで5.25~5.50%だった政策金利(フェッド・ファンド金利オーバーナイト:一日だけ銀行間で貸し借りする金利)が0.5%引き下げられ、4.75~5%になりました。

次回のFOMCが大統領選を考慮してその直後の11月6日、7日の予定で、今年最後の12月のFOMCと合わせてさらに0.5%程度政策金利が引き下げられるという見方が広がっています。

米国景気は、雇用に若干の陰りは見られるものの、比較的堅調で、ソフトランディングすると思われます。

一方、日本の状況を見ると、先にも述べたように、次の日銀の政策決定会合は10月30日、31日です。直前の27日に総選挙の投開票があり、次回の政策決定会合時には、その結果は判明しています。

日銀としては、現状のインフレ率と今後を考えるともう少し金利を上げたいところですが、石破政権への忖度をどれくらい働かせるか。

日本のインフレは収まらない

石破首相は10月4日の所信表明演説で「デフレ傾向からの脱却」について言及していましたが、日本の現状は明らかにインフレでしょう。それも、この物価高は今後しばらく続きそうです。米国ではインフレを「粘着性が高い」と表現されることがありますが、日本のインフレもまさにこの「粘着性が高い」だと私は感じています。日銀がなぜこの表現を使わないのか、それはおそらく語感が強い「粘着性が高い」と表現してしまうと、利上げを行わなければならないからでしょう。

筆者作成

図表1を見ると、8月のインフレ率〔消費者物価指数(生鮮除く総合)の上昇率〕は2.8%です。注意したいのは、企業の仕入れを表す国内企業物価が2.5%上昇していること。今年の初めには0%台にまで落ちていましたが、5月以降2%以上となって上昇しています。

輸入物価はこの企業物価に大きな影響を与えますが、その輸入物価も前年比プラスで推移しています。前年が大きく落ちたことと、円安が影響しています。さらには、運輸などの企業向けサービス価格指数も人件費の上昇などもあり2%台後半で高止まりした状況です。

また、10月に入り、テレビのニュースなどでは食料品などを中心に大幅な値上げの報道がありました。

こうしたことを考えると、日本のインフレはしばらく続くと考えられ、日銀としては、金利をもう少し上げたいと考えていると推測できます。