国交省が議論を進める「逆走防止対策」

こうした状況の中で、国土交通省や高速道路会社もさまざまな対策を講じてきた。2014年から対策を開始し、翌15年には高速道路での逆走対策の有識者委員会を設置。19年には「2029年までに逆走による重大事故ゼロ」という目標を掲げて逆走対策を推進していくとした。

逆走対策技術についての公募も行われており、テーマ別に3つの方法が検討されている。

ウェッジハンプ(NEXCO東日本HPより)

「テーマI」で扱われているのは、道路側での物理的・視覚的対策を行って逆走車両へ注意喚起を行う技術だ。11種類の注意喚起技術からいくつかピックアップすると、「ウェッジハンプ」は路面にくさび形の非対称段差を設置して、車両が乗り越える際の衝撃で注意喚起を行うもの。「LED発光体付ラバーポールウイングサイン」は、既存のラバーポールへ文字や矢印を大きく表示させることで逆走を未然に防止する。

これらはほとんどが表示による注意喚起が中心だが、中には路面に設置した突起で車両に衝撃を与える「路面埋込型ブレード」や、料金所前後の通行分離帯に設置する「開口部ボラード」を使って、物理的に逆走車を阻止しようとする仕組みも検討されているようだ。

「テーマII」では、準ミリ波レーダーやマイクロ波、3Dステレオカメラなどを活用して、アクティブに逆走車を検知して情報を収集する技術など4技術が選定された。また、「テーマIII」では自動車側で逆走を発見してその情報を他の車両に伝えて事故の発生を未然に防止するものとなる。

逆走の4件に1件が「故意」によるもの

こうした取り組みは一定の効果を生むのは間違いない。しかし、これらが逆走を根絶するには十分ではない気もする。というのも、「故意」に逆走するドライバーも一定数いることも明らかになっているからだ。

先のNEXCO東日本の資料によれば、2023年に高速道路上で発生した逆走は224件だが、なんとそのうちの24%、53件が「故意」による逆走だったというのだ。故意で逆走するとなれば、いくら警告や注意を促しても効果はほぼないに等しい。これは有識者委員会でも議論の対象となった。

そこで逆走対策としてもっとも効果的と考えられるのが、欧米などで採用されている「トラフィックスパイク」「スパイク・ストリップ」などと呼ばれるものだ。

写真=iStock.com/3sbworld
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これは、路面から“スパイク”状の突起物を出しておき、順方向で通過する際はこのスパイクが車両の重さで路面内に沈む。これによって、正常な方向に進む車両は問題なく通過できる。しかし、逆走車に対してはスパイクは突き出たままで、これをタイヤが踏めばパンクして走行できなくなるというもので、いわば逆走を強制的に止めてしまおうというわけだ。