配当利回り3.5%を目標に設定する理由

では、具体的に、高配当株をどうやって選べばいいのでしょうか?ここでは、私が実際にやっている株式投資法を皆さんにご紹介しましょう。

まず配当を基準にし、上場株を選別。私の選定基準は、「配当利回りが3.5%以上」の株。優待株の場合、通常の配当に、株主優待での実質的な配当金額を合わせた「総合利回り」で、配当利回りを計算します。「高配当ではないのでは?」と思うかもしれませんが、配当株の平均配当利回りは現在、東証のプライム市場とスタンダード市場で2%強、グロース市場で0.5%程度なので、3.5%の配当利回りは、それなりの高水準と言えます。

それに、配当利回り目標を3.5%に設定しているのは、ほかにも理由があります。私は、株の長期保有が前提なので、「増配を期待できるか」というポイントも重視しています。そこで、配当利回りと一緒に、増配の実績がある株かどうかも調べます。毎年のように増配している株ならば、配当利回りが現在3.5%でも、5年くらい保有すると、4%まで上昇することも期待できます。毎年配当を出し、増配もしている企業の株価は、上がっていなかったとしても、一定の需要があるので、下がる心配は少ないでしょう。

次に、企業の財務諸表も必ずチェックしましょう。配当利回りなどだけで株投資をするのは、極めて危険。例えば、配当金が同じでも、企業の業績不振や先行き不安などで株価が下がれば、その株の配当利回りは上昇します。つまり、表面上の配当利回りが高くても長期保有した場合、期待通りのリターンが得られない可能性が大きいのです。企業の経営状況を見ずして、株を買ってはいけません。

とはいえ、私は、簡単な財務指標しか見ていません。メインでチェックしている指標の一つはPER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)。PERは、株価と1株当たり純利益の比率を指し、PBRは、時価総額と純資産の比率で、株主にとっては企業の換金価値を表す物差しでもあります。

PERも、PBRも大きければ大きいほど、株が「割高」であることを示しています。私の場合、PERが10倍以上、PBRが1倍以上を目安とし、PER×PBRが15倍超の株は割高と見て、原則として手を出しません。

もう一つの指標は、純利益のどのくらいの割合を配当に回しているかを示す「配当性向」。80%までが許容範囲で、30〜50%が理想です。50%以下では、株主への還元が悪いと思われるかもしれませんが、それだけ増配の余力があると、私は見ています。一方で、注意したいのが「タコ足配当」。つまり、利益以上の配当を出しているケースです。中には、赤字決算でも配当を続ける企業もあります。企業に豊富な蓄えがある証しでもありますが、私は、そうした企業には投資しません。あくまでも黒字の範囲内で配当を出すのが、健全な財務のあり方だと考えています。

そのほか、余裕があれば、「自己資本が増えているか」(減っていても、研究開発投資などが理由であれば容認)、「有利子負債が減っているか」といったポイントも確認しておきましょう。

財務諸表では企業の収益も見ますが、株の長期保有が前提なので、企業業績の推移を重視します。直近10年度の決算が「増収増益」であればベスト。10年間の業績が右肩上がりの傾向にあれば、その企業には成長力があると言えます。反対に、「ベンチャー株」は、基本的に選びません。ベンチャーの株価は期待先行のため、割高なケースが多いからです。利益を先行投資に回さなければならないので、配当利回りがなかなかアップしないのも難点でしょう。

株の長期保有の一方で、「損切り」や銘柄の入れ替えを決断しなければいけないタイミングもあります。

例えば、経営戦略や市場環境の変化などによって、想定していた企業の成長シナリオと現実が、違っていた場合。業績が低迷し、企業価値も上がらないのであれば、見切りをつけるべきです。

株価が上がり続けていたとしても、配当金が変わらない結果、基準の配当利回りを下回った企業の株は、期待値に見合う増配がされていないため、手放します。なぜなら、企業の収益力や成長力が、高まっていないとも見なせるからです。

優待株の場合も、株主優待制度のレベルが下がったり、廃止されたりして、総合利回りが低下したら、売り時です。株主優待制度も、企業の収益力や成長力を測る手がかりになるからです。