DNAよりも先に指紋を採取している

甲斐竜一朗『刑事捜査の最前線』(講談社+α新書)

大阪府警の機動鑑識は現在、発生現場では遺留指紋の採取を最優先としている。府警鑑識課の幹部は「スピード勝負なら指紋が絶対だ。発生当日に犯人にたどり着き、再犯を防ぐこともできる。DNA型鑑定は時間がかかるし、そもそも容疑者が浮上してから武器になることが多い」と強調。「まったく容疑者が分からない中、現場の指紋などブツから犯人にたどり着くのは鑑識冥利に尽きる」と話す。

ただ指紋への過信が誤認逮捕を生んだこともあった。決め手となった遺留指紋が付着した経緯の裏付けがずさんだった例もあり、多くの警察幹部が「指紋一致イコール真犯人ではない」と警鐘を鳴らす。

そうした点も踏まえつつ、指紋の付着状況から姿勢、行動を推察し、供述など捜査情報と矛盾がないかを徹底的に吟味するのが、前述した“指紋の価値判断”だ。巡査部長から警視までの各階級において鑑識で現場臨場した橋本は言う。

「そこまで指紋を追究する価値は、十二分にある」

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