帰国子女は「語学力」も「文化力」も備えている

親の仕事の都合で、ニューヨーク、ロサンゼルス、ワシントン、シアトル……とアメリカの主要都市で暮らしている日本人の子どもはたくさんいます。英語をネイティブのように使える日本人が増えているという事実から目をそらしてはいけません。彼らは英語を「学習」しているのではなく、生活に必須のものとして身につけています。そうした彼らの強みは、語学力よりもむしろ「文化力」です。

長く外国で暮らした帰国生が、AIと比較してどれほど正確な英語をしゃべれるのか私にはわかりません。しかし、その経験から得た西洋カルチャーへの理解や適応能力、外国人との人間関係構築力というものは、AIを凌ぐでしょう。

「英語信仰」は親の古い価値観

富永雄輔『AIに潰されない「頭のいい子」の育て方』(幻冬舎新書)

もちろん、中国などアジア諸国についても同じことが言えます。たとえば、中国人やベトナム人と彼らの国の言葉で話して会話が成立したとして、それで彼らを理解できていると思ったら大間違いです。日常生活を送るための会話なら、AIでいい。AIを凌駕するような経験値は、どっぷりとその国で暮らした人でなければ得られません。

そういう経験を積んだ帰国生たちと競争して負けないほどの語学力を身につけることは、半端な勉強量では難しいでしょう。

こういう状況を勘案せず、語学学習に時間を割かせるのは、正しい判断ではないかもしれません。ほかのことをやらせたほうが、その子の未来は明るいかもしれないのです。「語学学習は大事だ」というのが、誰の価値観なのか考えてみましょう。もしかしたら、親の古い価値観ではありませんか?

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